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長い感想

100文字では足りなかった時に

Jリーグラボ見たメモ

Jリーグ サッカー

色々な成り行きもあって、いまJ3にいる、とあるクラブに肩入れして3年目。まだまだプロ契約できる選手の数も増やせないような小さなクラブなので、試合を見ていても力不足が否めない、観客動員も上がらない、友人を観戦に誘っても「うーん知ってる選手もいないしなぁ」なんて言われてしまう、ないないづくしなので、今回のJリーグラボが、いつも以上に格別に面白すぎた。
なので、気になったとこをまとめておくことにする。

この日のゲストは

 言わずと知れたゴッドファーザー・オブ・ヴァンフォーレ甲府、海野一幸会長
 ある日河野太郎から名指しで社長になれと言われた平塚の造園屋、眞壁潔会長

Jリーグの名物社長のお二人で、そりゃもうなまぐさ面白い話だった。Jリーグクラブの社長というと堅苦しそうな気もするが、潰れかけた会社を立て直して年商15億円にした、と言い直せば、地方のあくの強い剛腕社長でもある。

海野会長&眞壁会長の名語録をいくつか。

  • どちらのクラブも降格・昇格を繰り返してるという話のなかで、海野「落ちたら上がりゃいいんだ*1
  • 番組MC兼コンサドーレの社長、野々村さんの「札幌はプロヴィンチャですかね?」の質問に、
    海野「困った時にお金出してくれる企業があるかどうかだな」
    眞壁「要は仲間に入りたいか入りたくないか」
    野々村「今は!*2仲間ですけど」
  • Jリーグの会議で、オフィシャルスポンサーの競合排除権なんて関係ないだろうと言いだす海野さんのエピソードを眞壁さんが披露。
    眞壁「TVではトヨタのCMの後に日産のCMだってやってるんだから、全部(の企業)から貰えばいいんだ(と海野さんが発言)と。会議の他の参加者はニヤニヤして聞いていた。当時の常識ではそれは不可能だと思われていたけど、甲府はそれをやってしまった。
    海野「俺そんなこと言ったかなぁ 笑」
    眞壁「湘南で、大学の後輩のとある企業に広告依頼をしたら予算の都合でと断られた。ところがある日甲府の試合に行ったらその会社が甲府に広告を出している。後輩に連絡したら「甲府の社長に『甲府にある同業他社でうちに広告出してないのは御社だけですよ』と支店長が言われたと」「山梨という土地で商売するならここ(ヴァンフォーレ)にいなきゃだめなんですよ、と」
    野々村「天才的な脅しですね 笑」
  • メディアの活かし方と広告と地域貢献と…
    • 甲府は小さい町で広告価値に限界がある。それなら地域貢献の価値を取る*3。メディアに取り上げられるし、それを恩に思ってくれる人が増えれば。
    • 湘南や札幌の場合はスポーツ面で取りあげてもらいにくいので社会面を狙う。
    • 宣伝広告費で貰うのではなく、CSR的な地域貢献的な意味付けのお金を頂けるか「湘南を応援することが企業にとってもハッピーである」と思ってもらえるか
    • 神奈川はまたクラブが増えて大変だろうと言われるが、実は湘南は生まれた時からすでに(Jリーグに)4チームあった。元々自由競争の中にあったから、今4が6に増えてもあまり変わらない。神奈川で一番うまい子はマリノスに行っちゃう。その中で戦っていかなきゃならない。
  • J1に定着するためのクラブの予算規模って
    • 海野「年間予算を考える時、収入は最少に、支出は最大に見積もっておく。そうすれば絶対に黒字になるから*4。子供でも分かること」
      眞壁・野々村「ぼくら子供以下だから…笑」
    • 甲府がJ1に初めて昇格した時は、年間予算6億8千万円。入れ替え戦で戦った柏の予算は35億円ぐらいだった。奇跡!
      7億でJ1にあがって2年間居た間の予算は15億円ぐらい。その後J2に落ちても予算7億には戻らない、12億ぐらいだった。その後11億でJ1昇格→15億でJ1戦って1年で落ちて。J1に上がる前は10~11億、J1上がった年は15億というサイクルがパターンになっている。
    • 湘南は、J1昇格した年は予算9億、勝利給含め10.5億程度でブレない。
      10年間、昇格できなかった時は補強でベテランを呼んでいた。よくやってくれたが怪我も多いことと、J1を戦力外になった選手はやはりJ1では通用しにくいというのも身を持って知った。同じ予算規模でも今は若手中心に切り替えている。問題は予算の使い方であって、それを誤って数字に振りまわされるとクラブがおかしくなりかねない。
  • 今年のJ2大変よね…という話
    海野「まぁ落ちたらまた上がりゃいいんだけど*5…でも今J2厳しいよね」
    野々村「だって、お二方のクラブよりもはるかに(予算規模が)大きいクラブが4つ、5つありますからね。勘弁してくださいよ 笑」
    海野「千葉はもう…4年も上がれないんでしょ…京都もか……(眞壁さんに向かって)俺たちはツイてるんだな」
    眞壁「行いが良いですからね、お互い」
    野々村「海野さんは毎年9月ぐらいになると「俺ぁもうダメだ…」って言う」
    海野「ツキなんだツキ。うんのいいこ(海野一幸)って、な*6

海野さん、Jリーグ好きの間でガッカリフロントでおなじみの千葉と京都の名前を出すあたり、主旨が分かってるというか色々分かってるというか、まぁそれだけ千葉と京都のガッカリフロント具合ってフロント業界でも周知なのかななんて思ったり…千葉と京都のサポーターは辛いよね…。

 

それからJリーグ全体についての話、ひとつひとつクビがもげるぐらい頷いてしまった。

今までの護送船団方式というか、裾野を広げようという方針から、どうも日本代表のブラジルW杯の戦績がおもわしくないとか、ACLで全然Jクラブが勝てないとか、そういう問題から、強い大きいクラブを作ろう、という方針に切り替わっているらしい、Jリーグ。うんそんな気はしてた。その割にはJ3始めたりして迷走してんなぁというか現場に苦労を押しつけてんなぁと思ってはいた。

お二方は小さなクラブの経営者なので、もちろんビッグクラブ作ろう路線というか、クラブ間競争を激しくさせて面白くなくさせる*7J2軽視、地方軽視の施策については比較的否定的な論調だった。

否定的とはいえ、ビッグクラブとか要らんねんとかそういう子供が駄々こねてるようなことではなく、もっと根本的な話。

ビッグクラブったって、Jリーグ自体がクラブを持つことはできないわけで、クラブ自身が大きくなっていくしかないわけだけど、クラブを大きく経営を強くさせるためのJリーグのサポート・仕掛けは正直足りないと言っている。いやホントそうですよ。傍から見てるとボンクラぞろいに見える、Jリーグ

眞壁さんは、Jリーグがすべきクラブへのサポートについて、恐らく最大に必要で最大に足りてないのを、放映権獲得の努力だと見ている。

小さな都市を基盤にしてクラブ経営をしてきたお二方には、ブンデスリーガスタイルというか、入場料収入を収益基盤にした拡大策に限界があることは一番身に沁みて分かっているだろう。だからこその放映権獲得がいかに大切かを訴えるんだろう。
まぁこの辺はリーグ側からすると「魅力のない試合してるくせに放映権買ってこいとか片腹痛いわ」とか思ってそうだけど、こちら(クラブおよびサポーターサイド)から見ると、明らかに放映権獲得ビジネスにあちこちで失敗してるんだよなぁJリーグ…。

 

それから、一番面白かった話。やっぱり便利な場所に専用スタジアムが欲しいよね…という、日本在住の全てのサッカー好きの切なる願いについて。

海野さん曰く。地方創生というのは、サッカーを中心としたまちづくりをする最大のチャンスだと、商業施設をドッキングしてとか病院や健康維持施設をドッキングしてとか、そういう考えでやれるといいよねと。

そして、スタジアムを新しくしようという話の時に必ず邪魔しに出てくる「公園法」をどうするか、という話。これは眞壁さんの話が面白かった。何しろ眞壁さんは本業は造園屋である。公園法とかなり近いところにいる。

眞壁さん曰く、公園法の運用解釈は中央*8ではかなり自由に考えている。だが現場行政ではハードルが高くなる。
確かに、公園法突破する方便はゼロじゃないんだけど、それ突破するには地元の諸々との調整が色々大変だろうからなぁ…。

で、眞壁さんも海野さんも、Jクラブはもっと政治と付き合っていかなきゃダメだと簡単に言ってのける。

眞壁さんは、「地元の自分たちのクラブだ」と応援してくれる人がたくさんいるということは、政治に意見できる切り札を一つ持っているということと同じだと、割と大胆に言っちゃう。眞壁さんは平塚の古くから続く造園屋さんで河野太郎とも親しく商工会議所の主要メンバーでもあるような、政治に近い場所に居る人だ。

そして海野さん。海野さんはヴァンフォーレのゴッド・ファーザーになる前は山梨日日新聞政治記者だった方である。もろ政治の人。こういうキャリアの人が「totoの分配金もさぁ、サッカーが稼いでるんだからもっとJリーグにお金を分配してって言ってもいいはずなんだから、(Jリーグは)もっと政治的な動きをしてくれればいいのに」とか平気で言っちゃう。

 

Jリーグの名物社長お二人は、それぞれサッカーとは縁のない前半生を過ごしている。そして本業で得たコネクションやノウハウをサッカークラブの経営にフル活用している。
これは生臭い話だ。従来のスポーツ競技のイメージからするとかなり生臭い話にも聞こえるが、Jリーグは地域に価値をもたらしますよと言っているので、地方政治および行政ともっともっと近くても何も不思議じゃないんだよね。ところが、Jの中の人がどうも政治的な動きが下手すぎるわけである。サッカー選手上がりと広告屋で構成されているJリーグの中の人たちは、こういう話を聞いて何を思うか。あーはいはい、変わり者の社長がまたいつもの伝で、とか思うのだろうかな…。

 

インターネッツあたりで「税リーグ」なんて揶揄されたりもしているが、図書館やら公共ホールと同じだと思えば同じ公共財である。プロヴィンチャであればなおさら公共性は高まる、つまり政治に近づく。

Jリーグは、赤字出せない方針になった分、言っちゃ何だがむしろ図書館やホールより有能優秀だったりするわけだし、月2回は県外から2000人ぐらい観光客が来る*9ことを考えたら悪くない観光PR機能である。何しろお金かかってないからな。美味いものとか名所とか、J好き同士の口コミネットワークで広まって行列出来たりする。小作*10に。

 

ヴァンフォーレ甲府のホームスタジアムは甲府の郊外、小瀬スポーツ公園の中にある。よそ様のクラブのホームスタジアムにひどい言いようだが、古いし見にくい。おまけに我が軍*11は小瀬に弱く、わざわざ高速飛ばして見に行っても負け試合の方が多かったりする。
でも、小瀬には良い思い出ばかりである。食べ物旨い。あと何より人がとても良いのである。
私はぬるーいファンなのでアウェイの時はバックスタンドの自由席でちんまり観戦することが多いのだが、周囲にいる甲府サポさんたちが、ご近所同士の団体さん、お孫さん~おじいちゃんおばあちゃんまでの親子3世代とか、とにかくほんわかしている。見知らぬ私におやつを分けてくれたり、すごいですねぇなんて言いながら見てたりする。

あと、試合前にうろうろしてる海野さんに、サポーターさんたちは割とナチュラルに話しかける。おー、アットホーム。

それから、海野さんにはチャント(応援歌)がある。私は趣味観戦したときにたまたま海野チャントを聞く機会に恵まれたのだが、正直涙ぐんでしまったよ。

そういうの、たぶん、JクラブがACLで優勝するのと同じぐらい、とっても大切なことだと思うのよね。そういうのが無くなってしまったら、多分、今よりも日本代表はW杯優勝*12は遠のくと思うのよね。
「今日はJリーグ見に行こうかね」っていうのが、より多くの人にとって、映画行こうかとかイオンモール行こうかというのと並列できるような当たり前の選択肢の一つにならないと、W杯で優勝とかできないと思うんだ。

 

海野さんもう結構お年なのだが、Jリーグチェアマンなったらええのに。

少なくとも今のぼんくらチェアマンよりはずっと相応しいと思うけどなー。

*1:J2に落ちるというのは相当しんどい。入場料収入なども確実に落ちるし。それでも落ちても良いんだ上がれば、と言えるのは太っ腹というかスケール大きい

*2:これは札幌はいつかは頭一つ抜け出さなきゃという意識の表れだと思われる。札幌は政令指定都市だし北海道全域がホームタウンではあるわけだし

*3:甲府は病院の慰問や学校訪問授業とかイベント出演とか本当に山ほど選手が地域貢献イベントに参加している

*4:クラブライセンス制度の規定で、単年度赤字が続くとJリーグを退会させられてしまうので、赤字補てんしてくれる親会社がないクラブにとっては切実…

*5:2度目だ。肝が太い

*6:ダジャレだ…

*7:ここはあえて私はこう言う。Jリーグは世界に冠たる団子リーグでそれが面白さだったりもするので

*8:国交省かな?

*9:アウェイ観戦者は大体J1だと1000~2000人ぐらい、近場だともっと多いと思う

*10:ほうとう美味しい

*11:J1でも応援し続けているクラブがあります

*12:夢ぐらい見たっていいじゃない、にんげんだもの