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長い感想

100文字では足りなかった時に

執行猶予は一生です

長すぎるブクマ的なもの 家族のこと

家族の死というのは、その家族が個人としてどんな人間であったにせよ、または、ほとんど一緒に暮らしていなかったり、血がつながっていなかったりしたとしても、心に刺さる苛烈な体験だと思うのです。 

shikabane.hatenadiary.com

 

10年近く前になるだろうか、父が余り宜しくない筋のがんを告知された時、私は両親とは別の場所で暮らしていた。毎日の生活が楽しくてしょうがない、仕事も、ようやく自分が考えていることを形にする方法を覚えて考えていたことが世の中に出て行くのが楽しすぎた時だったので、父の体調や「あとどのぐらい生きられるか」ということだけでなく、それによって自分の人生もかなりの影響を受けるだろう(住むところや一人になるであろう母の面倒をどうしようかとか諸々)ことに頭を占拠され、利己的な気持ちと父を思う気持ちが持ち重りすぎて、職場でわなわなとしてしまった。

更に、ただわなわなするだけでなく、大変お世話になった会社の大先輩の顔を休憩スペースで見つけた私は、両親と近いぐらいの年齢の大先輩の顔を見つけて泣きました。お恥ずかしい。突然、元部下に泣かれて驚かれたことと思う。

 

しゃくりあげながら(いや本当にお恥ずかしい)、家族として父の近くで寄り添いたい気持ちや、そうすることで蒙るであろう個人としての不利益、当時付き合っていた人との関係がどうなるんだろうかとか、仕掛中の仕事どうすんだとか今全力で獲ろうとしてる新しい仕事は相当馬力がなきゃ難しいだろうから諦めなきゃいけないだろうかとか、そういうのを支離滅裂にぶわーっとまくし立てて、いや本当に穴があったら入りたいが、うんうんと聞いていた大先輩×2(途中でもう一人、足を向けて寝られない中先輩が休憩スペースに入ってきた*1)がほぼ同時に言ったのが「それでも、お前はお前の人生をやるしかない」という言葉だった。更に。

大先輩は、

  • 俺はお前と同じぐらいの子供がいるが、自分のせいで子供が何かを諦めたと知ったら死期を待たずに死にたくなるぞ
  • まあ焦るな、まずはトーチャンと、家族とちゃんと話してこい。半休とって明日も休んでいいから。

中先輩は、

  • その程度のことで、今までお前を育ててきた恩が返せるわけでもないし、親は子供に恩を返してほしくて育ててきたと思ってるならおこがましいにもほどがある、こっちは好きで育ててきたんだ
  • お前、その後一生「あの時父の看護じゃなくて自分を優先させていれば…」と思わずにいられる自信が本当にあるのか?
  • そもそも利己的なお前(中先輩の評価は大変正しい)が、できることがあるとすれば、自分の人生パートを全力でやった上で、一生父親への罪悪感や感謝やらをずっと抱えたままで生きてくことぐらいじゃないか?(中先輩の評価はひれ伏すレベルで正しい)
  • もうすこし先にやらなきゃいけないことは山ほどあるぞ(中先輩もご家族をがんで亡くした)

とても良い上司に恵まれてたぞ私、という話になってしまうのだが、とても利己的な私は結局、実家に顔を出す頻度を高める程度しかせず自分を優先して、父が、そして母が父のがんと闘っている間も利己的に過ごした。

 

父は告知後約6年がんばったのだが亡くなった。担当医からいよいよだと告げられた後の2か月弱は、仕事をかなり融通してもらって実家に戻り最期を過ごした。
当たり前だが、その程度で贖罪になるわけはまったくなく、10数年ぶりに戻った実家で生活するうちに、「悪くなるしかない病気とともに暮らした、年老いた両親の6年」をじりじりと感じて罪悪感がただただ大きくなった。
日ごとに悪くなる父の様子と、夫が居なくなってしまうのだという現実に追いつけず生気を失っていく母と、少しの善意の裏に隠した悪意を手土産にお見舞いに来る親族の対応とに追われて、これが中先輩が言った「もう少し先にやらなきゃいけないことが山ほどある」ってやつかーとか思っていた。

 

父を見送り、父の死に慣れることができないまま後を追うように母も亡くなり、結局私は、父と母に少しもできたことがなかった。
親不孝なままで終わってしまった。

 

 

こういう気持ちは、時がたてば解消するという種類のものではないような気がしている。どちらかと言うと、一生抱えつづけなくてはいけない荷物が、一つ増えたような感覚。
長く生きていると、こういう、「よく分からんけどずっと手に抱えたまま、がしがし、わしわしと前を向いて進んでいかなきゃいけない」ようなことがどんどん増える気がする。まだ生きてるもののできることなんて、せいぜい、手に抱えられるキャパシティが大きくなるように努力するぐらいが関の山である。

力持ちを目指して、がんばります。

*1:今思うと、私が高まっていた時に休憩スペース使いたかった人は他にも居たのだろうなと思うと本当に穴を掘って埋まりたい気分になるけれども