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長い感想

100文字では足りなかった時に

全体的に山が見えない箱根旅行とセザンヌ展

ゲージュツ

ようやくもぎ取った有休を使って箱根に行ってきた。

箱根は子供のころから大人になった今になっても良く行く。おかげで予定を何も決めずに旅行に行ける数少ない場所である。

泊ったのは箱根ハイランドホテル。新しくできた露天風呂付きの部屋がすっかり気に入って2度目である。食事は南仏風味のフレンチで、そりゃ都会の有名店とまではいかないけど割と美味しい。

仙石原の温泉は、東京から一番近い場所で味わえる白濁の湯である。ただし、白濁というか泥湯というか、大涌谷から引き湯して旅館で分け分けしているという性質上か、どろりとしたお湯でさっぱり系ではない。ホテルの人に、「噴火の影響でお湯の色が濃くなっています」と説明を受けたのだが、濃くなる分には良いことな気もするね。大浴場は面倒くさくなってしまったので、私は行かなかったのだが、部屋の温泉は恐れたほどの泥さではなかったので思い切り堪能できてよかった。
温泉付きの部屋に泊る時には、本や雑誌を何冊か持ち込むのがお約束で、部屋で他人の目を気にせず本を読みながら温泉に入れるのが至福である。今回は、棚橋が表紙のNumberと、橋本治の「失われた近代を求めて」シリーズの2巻と、積ん読状態だった「都市が壊れる時」を持ち込んで、結局どちらもあまり読まずに、風呂から眺める外の風景とぴいぴいとうるさ気持ちいい鳥の声にふわぁーとなりつつプロレス特集を眺めていた次第。

 

で、ハイランドホテルに泊まると何が良いかというと、ポーラ美術館が近いのも良い。ポーラ美術館は別のエントリに「成金的」という割と辛い評価を書いた記憶があるが、無計画に、ただぼさーっとしに行くような旅行にはちょうど良い塩梅に気が抜けるコレクションだと言えないこともない。
箱根ハイランドホテルは、お高い部屋笑に泊まると仙石原周辺の美術館のチケットの引換券がおまけで付いてくる。なので、ぼさーっと高原リゾートをしに来た私が見るのにちょうどよいということで、ちょうどやってた「セザンヌ展」を見てきた。

 

行ったのが台風が西日本に上陸していた時だったので、箱根も良い天気ではなくて、富士山も見えなきゃ近くの山並みの稜線だって、靄がかかって見えませんねという感じだったのだが、セザンヌ展にも、一枚もサント=ヴィクトワール山の絵が無かった。山に行ったのにトコトン山が見られない旅行である。

展示一覧を見ると、掛けられているはずだったサント=ヴィクトワール山は2枚、ひとつは横浜美術館所蔵のもので、これは7月アタマまでの期間展示で掛け替えがあったせいなので私のタイミングが悪いだけだし、あとおそらくそれは私は見たことがあるはずなのでまぁいいや。

もう一つは個人蔵のサント=ヴィクトワール山。これは箱根の噴火の影響で所有者に返却したと入り口で説明があった。

そうか、そりゃそうだよな。美術館も所有者のコレクターさんも英断ではあるよな。と思ったんですよ。

 

箱根の噴火に関して言えば、仙石原界隈に泊っていた限りでは全く気になることはなかった。美味しいものをたくさん食べてワイン飲んだせいもあるけど、すごくよく眠れたぐらいだった。それから、湯本の商店街のあたりや宮の下、それから最近流行ってる風祭かまぼこミュージアムのあたりとか、いつも人が多い辺りは特に、警報が出ている割にはお客さんたくさんいた。ポーラ美術館にもお客さんは結構たくさんいた。あと星の王子様ミュージアム?とかガラス美術館とか、チラ見した限りではやっぱり駐車場もそこそこ埋まってるみたいだった。まぁ本当なら、夏の連休の箱根なんて阿鼻叫喚かってぐらい混んだりするから、やっぱり少ないは少ないんだろうけど。
で、噴火の影響は小さいような大きいような難しいところだねと思ってたのだが、セザンヌ展で直接影響されてしまった形である。

 

実は、噴火の報道に最初に接した時に、ふと思い浮かんだ妄想は、彫刻の森美術館のロダンやらムーアやらの美彫刻たちが噴煙にまかれ、溶岩の熱で溶ける様であったので、これは愚かな私の勝手な妄想である。とはいえ、面倒なことになったよなぁとも思ったのだ。
だって箱根から伊豆にかけてのエリアって、ピンンキリではあるけど美術館がたくさんあるんですよね*1。中でも彫刻の森美術館は、個人的にはあまり好意を持っていないフジサンケイグループとはいえ、中々の骨太かつクラシカルな現代美術*2のコレクションがある。溶けるピカソ、溶けるロダン、溶けるムーアを勝手に妄想して心穏やかではなかったので、貴重なコレクションを引き上げたいというコレクターの気持ちは痛いほど分かる。分かるので、なんだよ山が一つもねーよとは思ったが納得して帰ってきた。

 

なので、主にポーラ美術館のコレクションを中心にしたセザンヌ展で、見たことあるぞ(なんだかんだ言ってる割には、来るのは4、5回目ぐらいなのだ)という絵を見ていたんだけど、今回の収穫は「ピサロの性格の良さ」をぎゅっと掴めたところである。

ものの本なんかを読むと、ピサロは個性派ぞろいの印象派グループのなかでも人望があって、ありとあらゆる才能から慕われたと言われていて、ふーんそうか、ぐらいに思ってたんだけど。セザンヌの絵と並べられたピサロ見て、あーなるほど、と得心したのでした。

まじめそうである。まじめで、明朗そう、それでいて一本筋は通っていそうな絵。じゃあそういう絵が私は好きかというと正直それほどでもないんだけど、その辺は、まじめで明朗で筋が通っている人とお付き合いして大変疲れた記憶がよみがえったりする厄介さがあるので置いておいて。

そんなピサロに関する個人的な感想がひとつ増えたりしたこともあり、さらにセザンヌはもともととても好きなので、割と楽しい気持ちで展覧会を後にしました。しかし美術館のメシは高すぎる。もうちょっと普通の値段にしてくれんかな。それを言うなら箱根は飯が高くてイマイチなんだよな全体的に。

 

また箱根行こう。あんまり混んでいないのは私にとっては好材料である。

*1:例えば琳派の名宝、尾形光琳紅白梅図屏風も熱海にあったりする

*2:クラシカルな現代美術っておかしい言い方ではあるが、まさにそういう言い方がぴったりなんです