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長い感想

100文字では足りなかった時に

空き家対策法と解体ローン

長すぎるブクマ的なもの

昼間、ちょっと気になったのでブコメしたんですけど。

空き家解体ローンが増えているよ。空き家はほっとくとダメって法律もできたよ。 - D'ac

地銀は面白いサービスを思いつくもんだなと思いつつ、ちょっと脅しっぽいにおいがする記事の内容が嫌だったんですよ。

 

このローン商品は、通称「空き家措置法」とか「空き家対策法」とか言われている法律が施行されたので、その関連ビジネスなわけですけど、現実的には、行政代執行される前にローン金利を何パーセントも支払ってまで空き家を取り潰す必要って、実はあんまりないですよ。

 

空き家措置法は、いわゆる「ゴミ屋敷」や、東日本大震災で半壊・全壊被害を受けた建物の、管理者が見つからない・所有者が相続を経て複数人になっていて意思統一ができないために改築や取り壊しが進まないといった建物を、法律で規制することで各市区町村が場合によっては行政代執行できるように、作られた法律なんですよ。
更に裏テーマとして、東京近郊や地方の都市部では、空き家なんだけど潰すと固定資産税も高くなるしな、とか、使ってはいないんだけど場所が良いから手放すのも惜しいんだよな、とか、相続で骨肉の争いをしているせいで塩漬けになって、という理由の空き家も結構あります。実は地方都市のシャッター商店街なんかはこういう理由でシャッターが下りてしまっている場合も少なくありません。都市部においては、ゴミ屋敷対策だけじゃなくて、こういう「使ってくれれば街の資源になるのに…」という不動産をゆり動かして何とかしたいという色気も行政側にはあるようです。

 

で、今、具体的にどのように進捗してるかと言うと、可決された法律を元に都道府県ごとの「実施ガイドライン」がおおむね出揃って、市区町村レベルでの実施体制や方法、ルール策定が進んでいるところです。
もちろん、各自治体によって進捗スピードや実施体制はかなり違います。都市部の住宅密集地と、地方都市の郊外、いわゆる田舎なのかによっても、優先順位も、空き家対策に割ける予算も人手もぜんぜん違う。ただ、まだ実際に空き家措置法に基づいて空き家対策の具体アクションをやっている自治体は少ないです。まだリスティング作業をしてるところも多いと聞きます。

今見られる自治体のガイドラインを見ると、多くの場合、通報→周囲ヒアリング・現地調査→所有者ヒアリング→固定資産税の自宅減免措置を解除→改善がなく所有者との話し合いも不調に終わった場合は、場合によっては行政代執行など、という順序で進んでいくのではないかと思います。
 なので、ある日急に、役所の人が『この空き家、困るんですよねぇ…来年から固定資産税の減免措置を外しますからね。6倍ですよ6倍フヒヒ…』なんて言いに来ることは、まずないと思っていいです。

役所は税金を取っていくイヤな人だという面もありますけど、大原則として「所有者が本当に困っているけれど、そんなの知らん身ぐるみ剥いでやる」という態度になるわけがない。なので、ローン組んでまで慌てて建物を解体するシチュエーションになる気がしないんですよね。

 

多くの不動産は「値段を下げれば」買い手がつきます。耕作放棄地なんかの例はあまり私も知りませんが、農協や林業組合なんかに相談しに行けば方法はあるんじゃないかと思います(言いきれるほどの自信はないですが…)。

買い手がつく不動産であれば、解体費を買い手に負担してもらう条件で値段を下げちゃえばいいんです。そうすりゃ金利は支払う必要ないんです。もしくは買い手が見つかってから解体費を捻出すればいい。

最悪のケースとして「使用してない、借り手も買い手もつかない、ご近所にも迷惑…、解体するお金もない…」という状態でも、行政が「解体費+解体ローンの金利」以上の解体費用を、その辺の事情の斟酌もなしにどさっと請求してくるなんてことは、他の似たような事例を鑑みても、ちょっと考えにくいんですよ。悪意があるわけじゃないので、行政が個人へ掛ける負荷としては大きすぎる。よほど荒れ果ててご近所から苦情が殺到しているとかの公共の利益に反する事象がない限り、不平等が発生してしまうような執行手続きは取れないと思う。
仮にもし、自治体がそういう風に雑にどさっと請求してきたとしたら、その時点で民間のローンを組んで支払うかどうか考えても、ぜんぜん遅くないですよ。解体ローンがどういう条件なのかはちゃんと見てないんで知りませんけど、用途限定してるローンなのでそれほど審査が大変だとも思えないんですよね。

 

私は個人的には、ご提示されている「空き家解体ローン」は、ちょっと慎重に考えた方がよい商品なのではと思います。そもそも「利用しない不動産に対するローン」なんて酷い商品だと個人的には思う。もちろん、空き家解体ローンがとても有効な方もゼロじゃないとは思うんですけど、現実を考えるとレアケースなんじゃないかなぁ。

 

お若い人はご存じないでしょうけど、1980年代、バブル真っただ中の頃(私もその頃は子供だったので実情を体感はしてませんが)、大手都市銀行は、変額保険の購入資金ローンと言う商品を販売していました。
「土地の値段が急に上がったのでこのままでは相続税がかかってしまいますよ、土地を担保に借金をして保険を買いましょう。そうすれば借金と相殺されるので相続税はかかりませんし、保険金として戻ってきます」という触れ込みで売っていたらしいですけど、これがどういう顛末になったかは 変額保険 - Wikipedia にかなりきちんとまとまっています。

金融商品ってリスクが付き物ですし、最終的にはもちろん購入した人の責任になることではあるんです。でも、上にあげた変額保険は、保険会社は集団訴訟を起こされたりしています。コンプライアンスなんて言葉はまだ輸入されていなかった笑。ので、酷い営業手法でお年寄りに売りつけちゃったんですね。

でも今はもう21世紀ですし、コンプライアンスなんて良い言葉も浸透しつつあります。空き家措置法の内容も、実務レベルではあまり頼りにはならなそうな知識みたいですし、付け焼刃であまりおススメできるとは思えないものの紹介とか、あんまやんない方がいいんじゃないですかね。いくら個人ブログとはいえ。

 

追記

id:peticonbu さん。

あなたがどのようなお気持ちや意図でブログを書かれているかは、私にはあまり興味がないのですが、先に取り上げたエントリの内容に、どうも腑に落ちないことがあったのでブコメで指摘いたしました。

その後ブコメを閉じられたのでどんなやりとりだったかは私の側からしか分かりませんけど、閉じた後に、後出しみたいに、私がブコメで指摘した内容を元の記事の追記にまるっと「そんなの知ってたけど」的に掲載されるのは、あまり気分の良いものではなかったです。

 

それに追記された内容についても、まだちょっとおかしい点があるんですよ。
解体費用について、冷蔵庫の家電リサイクル料金と比べられています。価格が全然違うものを比べているのも理解に苦しむのですが、そもそも冷蔵庫は何千円か支払って業者に引き取ってもらえば所有者の手からは一切離れますが、不動産の場合は建物を解体しても土地は残ります。建物の解体費と家電リサイクル費用とは、一見すれば同じように見える費用ですが、その費用の「意味」も違えばその「もの」に係る時間の長さも全然違います。性質がかなり違うので比較には適してないと思います。

残った土地を売却するなり、誰かに貸したり自分で使うなりしてその代わりに固定資産税を支払うというステージが残ります。土地には、売買や賃貸借するかもしれない人や税金を収受したい自治体などが後ろに控えている、「その後」があって関係者もいるので、関係者(例えば地域の人で買ってくれたり借りてくれそうな人がいないかとか、自治体に相談したりとかです)をすっ飛ばして、一番目に銀行の目的性ローンを選択する必然性は、多くの方にとっては低いと思います。そして、元の文章からはなぜ解体ローンをお勧めされたのかは、少なくとも私にはあまり伝わってきませんでした。選択肢が増えるのはひとつも悪いことではないですが、煽らないような書き方は、少し調べればできたことだと思います。

ご自身の手に余る内容を取り上げたから「そういう内容」なのか、ちょっと話題になってるタームを取り上げて少し刺激的な言葉を付けて流入量を上げたかったのか分かりませんけど、どちらにしても、少なくともブコメ隠したあとに私がブコメった内容なぞってテキトウ追記するのは、なんか、できれば勘弁してほしかったです。