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長い感想

100文字では足りなかった時に

中村俊輔

横浜F・マリノス Jリーグ サッカー

デビュー戦を鮮明に覚えてる選手が、外国に送り出して夜中にドキドキしたりハラハラしたり、涙したりちょっと失望したり悔しがったりしながら、日本に帰ってきたのを迎えて、また間近で一緒に戦いそしてベテランになっていくのを、このところじーっと見つめ続けています。

 

Jリーグ好き・サッカー好きの「一部の人」の中には、彼をひどく馬鹿にする人や嫌う人がいる。かなり気持ちは分かるんだけど笑、けれど私はやっぱりすごく好きなんですよ中村俊輔が。

いわゆる「アンチ俊輔」の言い分、まぁ、大切な試合での勝負弱さとか、結果が出せてない時のかなりアレな態度やインタビューなんかは、好きな選手なのに「ああ俊輔はこれだからもう」と思うのだから、好きでもなきゃ応援してるクラブと何の関係もなかったりしようもんなら、いけすかない奴だと思ってしかたない。南アW杯直前の諸々も評判を落としたしな。

 

彼は、ほとんどのトップアスリートがそうであるように、とても負けず嫌いでチャイルディッシュなところがある。当たられたらムカつくからやり返すし、試合前に挑発めいたことを言った選手を狙ったりする。そしてクラブや自分のプレーがうまく行っていない時はおもいきり不機嫌になる。

そして少なくないトップアスリートがそうであるように、自分のプレースタイルに求道的なところがある。「俺が具現化したいサッカー」が見えているという才能・凄味がある一方で、不本意なポジションや役割をやらされていたりスタメン外れている時は不機嫌である。俊輔の場合は「俺は生まれながらのトップ下の司令塔なのに」という態度である。いつも練習熱心な人ではあるが、スタメン外れている時は熱心さが内に向かうというか、あまり宜しくないメンタリティになったりもする*1めんどうくさいタイプである。

負けず嫌いでプレーにビジョンがあると言えば、すごく褒めている風だけど、お行儀の悪いプレーやセルフィッシュに映るプレーもする、使われないとふてくされて陰にこもる、と言えば割と最悪な感じである。ある種の人に評判が悪いのもしょうがない…。

 

でも、彼はいつごろからか、少し変わった。成長している。

具体的にはやっぱり代表引退してからだろう。「俺のサッカーを追求する」よりも「クラブのため、サポーターのため、後輩のため」のプレーや言動が目立つようになった。
何よりも、若い頃はタックルはもちろんのこと接触プレー嫌いだった俊輔が、タックルとか普通にするようになった。守備そっちのけで攻撃のかたちを作ることに夢中になっていた男が、前線から相手選手を追いかけまわし、あらゆるエリアをまっかっかに染めるヒートマップを作るようになった。

 

もちろん、サッカーの流行の変化によって、彼もプレースタイルを変化させざるをえなくなったという面もある。1997年に俊輔がデビューした頃から絶好調に脂が乗っていた2005年ぐらいまでは、「司令塔」「ファンタジスタ」なんていう格好宜しい言われ方がまだあって、広い視野と素晴らしいテクニックを持ったボランチやトップ下がセンターラインに君臨し文字通り試合をコントロールするようなサッカーが、まだ通用していた。俊輔自身もレッジーナセルティックでは司令塔だった。特にセルティックでは、ゴードン・俊輔ラブ・ストラカン監督が、まさに「俊輔のためのチーム」を作って皆様ご存じの大活躍だった。

 

その後は、散々だったドイツW杯から南アW杯までの間は、割と不遇な時代が続く。
スペインに移籍したけどほとんど出場できず、2010シーズンは暗黒期のマリノスに戻ってきた。「南アW杯のために練習環境と出場機会を求めて、古巣に甘えて逃げ帰ってきた」という話もちらほら聞こえていて、マリノスのゴール裏からは「横浜のために戦う覚悟はできたか?」とかなんとかいう挑発的な横断幕を出されたり、レジェンド木村和司率いる雑サッカー*2でちっとも楽しそうじゃない様子だったり、何だかんだすったもんだあって*3南アのW杯ではほとんど活躍できず、世間が「サッカー代表ブーム」に湧く中で代表引退した。

悪夢のような2010年が終わって、次の2011シーズンは地震のあった年でもあったが、松田直樹がもういないマリノスだった。そして結局その年の夏にマツは死んでしまった。マツを追いだした、という噂もあった和司の雑サッカーが何故かハマって、割と好成績だったけど、あんま楽しそうじゃなかったのは相変わらずだった。マツを追いだしたのは俊輔の高給を賄うためだったんだとか心ないことを言う人もいたりして、クラブの成績は悪くないのに暗黒気分は抜けなかった。暗黒気分が抜けなかったのは、ジーッと試合を見つめていた私自身が、マツのことが悲しくて悲しくてしょうがなかったし、地震のことがあって気持ちが座らなかったのもあったのかもしれない。芯食ってない和司の雑サッカーつまんね、ってのもあったし。

ただ、俊輔のインタビューとかの発言が、少しずつ変わってきてた気がしたシーズンでもあった。能動的というか積極的というか、斜に構えた言い方が減ったような気がして、おや?色々苦難を舐めて大人になったのかな、とか思っていた。 

 

2012年から、監督が叩き上げの樋口さんに変わって、「(もちろん良い意味で)俊輔頼みの糞サッカー」を作りだしてから、優勝し損ねた2013シーズンにかけては、まさにフォー・ザ・チームな2年間だった。
プレースタイルは前述の通り「俊輔が!タックルして相手選手止めとる!!」という驚きもあったが、今まではちょっと斜に構えた態度だったヒーローインタビューでウケを狙うようなことを言うようになったり、2年前には、おまえマリノスのためにやる気あるんか?って突きつけてきたゴール裏のサポーターが「俺たちは俊輔と優勝したい」というダンマク出して、それに応えるような熱いゴールを見せてくれたり。無理しすぎで胆のう炎になっちゃったりなー。
2013年の最終節、等々力で泣き崩れる様は思い出すだけで泣けるよ泣ける…。

 

何が変わったのかなんて、本人でもないから分からないし私の思い入れによる勘違いという気もしないでもないんだけど、でも、若い頃の、「俺のサッカーを見せてやるんだ」という様子から、クラブやサポーターのために、周りの選手のために自分が居るという様子が前に出るようになったと思う。 

今年は監督も変わったり骨折で開幕離脱するはめになったりで、スタメンが取れず、ようやく稼働するようになっても、できればやりたくないと常々言ってる*4ボランチで使われたりしてた、そんな彼が、去年はぜんぜん当たらなかった直接FKを、この2試合連続で当てている。
世界中を旅して色んな目にあったのをジーッと見つめ続けてきて、今こういう場所にいるのが、何だかちょっと信じられないようなぬくぬくむずむずと嬉しい気持ちである。

 

で。ここまでぐだぐだと「俊輔はアレなとこあるけど最近大人になったんだよ」と言ってきてなんなのだが、結局、土曜の試合ではトップ下に返り咲いた嬉しさで緩んだのかしらんけど「監督がようやく俺のこと分かってくれたみたいで」とか生意気な口を叩いてて、やっぱ変わってないと笑った。
週末の試合の、スカパー!Jリーグ振り返り番組・マッチデーハイライトをスタジアムからの帰りがけに見ていたら、解説の水沼さんが、1点目の直接FKについて、『俊輔は壁の中でぴょんぴょん飛び跳ねる槇野を狙ったんじゃないか、「へっへん、そんなことやったって無理だねー」って感じじゃないか』と言っていた。

やっぱり変わってないんだ。三つ子の魂である。変わってないんだけど、でも若い時とは違う、おかしみというかそういうのがあるような気がするんですよ。ひいき目ですか?ひいき目でもしょうがないですけど。

 

ほぼデビューの時からプレーを見ていて楽しみにしていた選手が、とても良い感じに老成していくのを見るのは、本当に楽しいですよ。

 

おまけ1

比嘉さんのおかげで当たりが柔らかくなった説は、まぁインターネット上の冗談なんだろうなと思う。たまに比嘉さんの将来を心配している様子なのが面白い。

 

おまけ2

Jリーグ嫌いな人の中には、ゴール裏の応援の“ああいう感じ”を揶揄して、あんなの自己満足だとか言う人がいたりするんですが、実は、観客と選手はかなり密な「同じ空気」を共有している。戦績が悪いときは応援も散漫(逆も真なり)だったり、試合の“筋”を先読みしたようにチャントをうなり始めたりとかは、頻繁に起こる。
Jリーグの観客は幼稚でただがなってるだけ、というのも見かけるけど、TV中継では、代表戦でもリーグ戦でも両ゴール裏の近くにマイク置いて別で音拾った上でミクシングしてるから目立って聞こえるだけで、現地観戦すると、J1はもちろん、J2とかJ3の試合でも、「物凄く良いパスコースからのごって気持ちええトラップ」、とか、「するりと移動してスペース埋めて事前に危機阻止するSB」、みたいなプレーに「おおおおおおぉぉ…」「ぅぅぅおおおお…」とかいう歓声が良く聞こえます。そういう地鳴りのような歓声を聞いて選手が見る見る燃えていくのも、よく分かるよ、現地で見ると。

一体感、なんていうと陳腐だけど、久しぶりに優勝に手が届きかけた2013シーズンは、私が個人的に春先から最後2試合以外ホーム・アウェイ皆勤&久しぶりのゴール裏というキチガイ沙汰をしたせいもあるかもしれないけども、選手の状況とチームの状況とサポーターの息遣いがすべてシンクロするような瞬間を何度も経験した。この試合このシーズン残り1秒たりとも見逃すものか、この声がもっと伝われば最後まで走ってくれるに違いないという観客の気迫と、ぜってえ勝ってやるという選手の気迫に結果がついてきたり、動員が増えたり神企画*5が頻出したりというクラブの調子が最後までかみ合い続けると、優勝できるんだろうね……(遠い遠い目で)

 

おまけ3

好きなものについて書くのは難しい。し、なっげーわ。

日曜から、3回ぐらい書き直してるのに、なっげーわ。

*1:スペイン時代なー

*2:俊輔おるんやから放りこんでセットプレー取った方がエエに決まっとるんじゃ的なことを言ってて心底がっかりした記憶が笑

*3:岡ちゃん監督もあやうくクビになりそうになったりしてましたね…

*4:結局あんまり変わってはいないんだよな笑

*5:ハピバースデードゥトラ40、ドゥトラ面だらけの三ツ沢神企画があったのが2013年

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