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長い感想

100文字では足りなかった時に

すごく長くなってしまった「10冊で自分を表現」

感想いろいろ

#本棚の10冊で自分を表現する ということをして遊んでいる方々を見て、そんなの大好きに決まっているので、やってみました。

本選びは先週、タグを見かけた時にうーんうーんあーでもないこーでもないと、やったんだけど、そのまま忙しさに取り紛れていて、連休の「なんもしない日」にちょうど良いので、ラグビーワールドカップのオープニングゲーム見ながら。

 

これ、10冊って少ない!というのもあるが、「自分を表現する」というのが結構面白くて困った。単に好きな本というよりも恥ずかしさが倍増する、マゾぽいくくりで、誰が考えたのか知らないけど面白いなー。

全貌はこれです。現物なのできったない本もありますね。何度も何度も読み返したんです。あと買い直してるのもある。

 

 

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私の個人主義 (講談社学術文庫)
「私の個人主義夏目漱石 

夏目漱石は何しろ大好きなのだが、好きな理由は「ちょっと冷たい、つんとしてるところ」である。時代が180度変わった時期に子供時代を過ごした「頭の物凄く良い少年」がその後どのような思索を経て、50歳を待たずに胃を壊して亡くなる羽目になったのかを考えただけで、胸が痛くなる。大学時代の恩師が「漱石みたいにモノを考えたら、まともな神経の人なら胃が壊れてもおかしくないよな」と言っていたけども。
小説では「それから」が一番好きなのだが、あえて評論集を選んだのは、この「私の個人主義」という有名な評論が素晴らしいから。西洋という異質と出会ったことをきっかけにした「個」を生きる覚悟と厳しさについて。
これは何度も読み返したうえに、何度か落とした本なのだがそのたびに私の手元に戻ってくる不思議な本。一度は、大学でもとびきり人気がない屋上で一人で読んでたのだが、そこのベンチに忘れてたものを、友人が「これはきっとお前が落としたに違いない(その友人たちは私がこの本を持っていることは知らないはず)」と決めつけて渡しに来たという奇跡も生んでいる。

 

虹のヲルゴオル (講談社文庫)
「虹のオルゴオル」橋本治

橋本治は変な人なのだが、不思議に魅力があって色々読み散らかしている。橋本治に出会ったきっかけがこの「虹のオルゴオル」という本で、中身は、名作映画に出てくる主人公と演じた女優についてのエッセイ、という体の「女の生き方・百態」という趣の本である。
私はてっきりハリウッド映画についての評論だと思って買ったので、読後感とのギャップにビックリしたけども、これも、出会ってからこれまでの間に何度も読み返している。基本的にはどんな生き方だっていいじゃない、生き方を選べる力を持ちなさい、という感じ。

 

幸田文全集〈第1巻〉父・こんなこと幸田文

全集ってズルイと思うけどしょうがない。幸田文は私にとっての人生の師匠。まだ働き出して間もない頃に、かなり苦しい懐からコツコツと岩波の全集を買い集めた。
彼女の文章からは「生きるということは苦悶である」「でもしょうがないからどうやったら真っ当に生きていられるか」というようなことが滲んでくる。幸田文のパブリックイメージってどんなんか好きすぎて分からないが、読むと実は、結構癇性のキツイおばさんである。そしてそういう「どうにもならない尖ったところ」にガッカリしたりする様子まで大変に素晴らしく、トコトン落ち込んだ時には読み返し涙するのです。

 

枯木灘 (河出文庫 102A)
枯木灘中上健次

中上健次も、どれもこれも平均2、3回は読みなおしてると思うんだけど、その中でもやはり枯木灘を。秋幸がかわいそうすぎてエロ格好良くて、中上健次ってあんなむくつけな見た目で無頼派ぶったイメージあるのにずいぶん繊細な男だな。
小説の好みとしては「圧倒的に持ってかれる」感じがするものが大好物なのだ。大江健三郎の四国サーガも好きだしこないだのハルキさんの1Q84も素晴らしい。

 

けものづくし―真説・動物学大系 (平凡社ライブラリー)
「けものづくし」別役実

底冷えするような戯作でおなじみの別役実と出会った本がこれ。嘘ばっかり書いてある。本当にでたらめばっかりがならんでいて大変気持ち良い。 どっから見てもでたらめだと分かるのに書き連ねられるというのは「視点」の問題で、こういう視点を持った人に私もなりたい。この「でたらめシリーズ」は他にもたくさんあって、集めるのが大変だったけど(大きな本屋でも置いてなかったりするし昔はamazonがなかった)がんばった。今はamazonで何でも見つかってほんと便利になったよ。
そういえば、デイリーポータルZのライター・べつやくさんのお父上である。昔、ネットサーヒンをしていてデイリーポータルのべつやくさんの記事にたどり着いて、この名前?そしてこの視点?さては??って思って顔を拝見したらお父上に似ていて驚いた記憶。デイリーの記事も面白いよね。そして別役父の本の装丁に別役怜のクレジットがあったりします(有名な話か)。

カナダのさけの笑い

 

百年の孤独 (新潮・現代世界の文学)」ガブリエル・ガルシア=マルケス

これも「持ってかれる系」の小説の金字塔である。本当に「百年」の「孤独」について書いてある物語なんだよなぁ…。すごい小説。読むたびにぐったりするんだけど何度も読み返している。
全然関係ないけど、ガルシアマルケスっていうお洋服のブランドがあるらしいのだが、ギャル系?かなーと思うんだけど、あれ着てるお嬢さん方は読んだことあるのかなとかたまに考えたりする。族長の秋も好きです。

 

モモちゃんとアカネちゃんの本(3)モモちゃんとアカネちゃん (児童文学創作シリーズ)
「モモちゃんとアカネちゃん」松谷みよ子

 幼少時の愛読書中の愛読書。モモちゃんシリーズで一番スペクタクルな「モモちゃんとアカネちゃん」をセレクトしました。モモちゃんが「自分」を見つけていく様子が素晴らしいんだよなー。松谷みよ子さんの自伝的なお話らしいのですが、自伝でこの体験をしていて、それを可愛らしい物語の形にできるなんて…すごいわ。
私はこのモモちゃんシリーズと、佐藤さとるさんの創作童話が幼少期の栄養でした。

 

第一阿房列車 (福武文庫)
「第一阿房列車」内田百閒

目的もなく旅行に行き電車に乗るなら一等に乗るに決まっていると言う百鬼園先生の有名すぎる電車エッセイ。
旅行の心得をこれで学ぶというかなり間違った学習をしました。

 

サッカー茶柱観測所
「サッカー茶柱観測所」えのきどいちろう

えのきどいちろうさんは、熱狂的日ハムファンでアイスホッケークラブ・日光アイスバックスの経営者で、アルビレックス新潟の熱狂サポーターでもある方。愛にあふれた目線でスポーツを見る大好きなライターさんである。
Jリーグおもしれえ、サッカーおもしれえ、と思いだしたのが大人になってからなので、私の「サッカー観」はほぼ全部この本で培われた。一つの試合を見ていて、どこか一つ「茶柱」が立つ瞬間がある、というのが本の題名の主旨らしい。確かにどんなスポーツでも酷い試合であっても「見所」ってあるもので、それを見る目を持っている方が、スポーツ好きじゃない人でも人生が愉快になると思うのよ。

 

Philippe Halsman's Jump Book
「 JUMP BOOK」フィリップ・ハルスマン

最後は写真集。フィリップ・ハルスマンは、LIFEとかVOGUEのカヴァーフォトを撮っていた著名な写真家さんである。 ハリウッド俳優や外国の王族貴族などのセレブリティ、政治家などの写真を撮る「ついで」に、ここでジャンプしてくれませんか?と頼んで撮った「ジャンプ写真」のコレクションである。
表紙の写真はハルスマンさん(左)とマリリン・モンロー(右)。他にも、有名スター、大企業の社長、法曹界の重鎮、科学者、オペラ歌手、芸術家など、百花繚乱のジャンプっぷりが見られる。ピカソとかダリとかシャガールとか、スタインベックとかが飛んでいる。ハルスマンさん自身が「ジャンプ」について分析している様子もとても理知的でよい。なんで日本語版が出ないのかと思う。すごくいいのに。

 

以上10冊。何度も読み返している本、自分を作る助けをしてくれた本、ピンチを助けてくれた本を選んだんだけど。

 

実は、結局、10冊選ぶのは無理で、上のスタンダード10に加えて、アウトテイクがある。それも10+1(全集入り)という卑怯ぶり。

 

アウトテイク10+1

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日本文壇史1 開化期の人々 (講談社文芸文庫)伊藤整

文庫で全18巻。途中で伊藤整が亡くなってしまったので続きを瀬沼茂樹が書いているが、さすがにそこまでは手を伸ばしていない。
近代化の中で「個」を捉えるために、色んな人が色んなことを言ったり書いたり喧嘩したりしているのがとても面白くて18巻は割と簡単に読めます。今思うと、「急に明治になったから」混乱してたと言うよりも、世界的に「急に近代になったから」色々混乱したんだよなと思う。そういうの考える役目をアメリカではスタインベックなどが担当してやっていた模様であるけども。

 

掌の小説 (新潮文庫)川端康成

川端康成は格好付けであんまり好きじゃないのに、この短編集だけは何度も何度も読み返している。美しい。短いから格好付けが鼻につく前に話が終わるのが良いのかも。すごく美しい写真集を眺めているような短編小説集。

 

杏っ子 (新潮文庫)室生犀星

私は女なので、つい「女の生き様」本を読みたくなる。男が語る「女の生き様」は大抵、へーはーほーふーん、という感じなのだが、この本は、室生犀星という「捨てられっ子」が自分の娘を材にとって書いたお話で、愛情と冷たさと父娘の距離感が素晴らしくて好きなのだ。
私は完成度の高いファザコンなのと、父もたくさんの兄弟のなかで事情があって一人だけ不遇だったので、個人的な思い入れがすごく強いもの。

 

水晶の精神―オーウェル評論集〈2〉 (平凡社ライブラリー)ジョージ・オーウェル

「自由」ってなんでしょうね、ということを教えてくれた本で、「親戚のものすごく頭の良いお兄ちゃんが教えてくれた」感じで、すごく好きなのだ。オーウェルはカタロニア賛歌も素晴らしいのだけれど、この平凡社でまとめてくれてるエッセイ集がどれも素晴らしい。ああこれも全集的なものだな。卑怯だな。

 

幽霊たちポール・オースター

私は文学部でアメリカ文学の勉強をしたんだけれど、それを勉強しようと決めた本がこれ。オースター素晴らしいね。本当に。

 

オシムの言葉―フィールドの向こうに人生が見える木村元彦

木村元彦さんによる、オシムさんの伝記。 これはベストセラーだな。
木村元彦さんはバリバリのレフトウィングなんだと思うんだけど、なぜかサッカーのルポルタージュばかりを出版されていて、それが全て素晴らしいものばかりである。
敢えて言葉を選ばずに言うと、一般的にレフトウィングな方々は、主題を置いてけぼりに「主張」ばかりが見えてしまう言説、文章の方が多いように思うが、木村さんの本には根底に「サッカー愛」があるのがとても好きだ。左翼ジャーナリストなら灰色を黒にして責め立ててもおかしくないような問題でも、必ず逆の目線も取材する、ジャーナリストの鏡だと思うのです。同じく木村さんの描いた大分トリニータの社長で現・観光庁長官である溝畑宏を追いかけたルポ「社長・溝畑宏の天国と地獄 ~大分トリニータの15年」の方が、そういうジャーナリズムは顕著に分かるかもしれない。
オシムの言葉は、オシム爺さんの人生の伝記という形で、旧ユーゴスラビアの分裂・紛争の内実が良く分かる内容になっていて、サッカー好きとしては身を切られるように辛い話が続く、続くがとても良い本。Jリーグのアウェイ遠征に行く時に良く持っていくのです。

 

魂にメスはいらない ユング心理学講義 (講談社+α文庫)河合隼雄谷川俊太郎

河合隼雄さんの本も山ほど読んだんだけど、これ。臨床心理士の草分けだけあって、対談本が特に図抜けて素晴らしくて、私が治療されているかのような錯覚に何度も陥ることができる。本は古本屋で買ったので多分10円とかなのだが、それで何度も読んで何度も治療されたような気持ちになれる、大変お得な本(でいいのかな)。

 

草野心平詩集 (1981年) (現代詩文庫〈1024〉)草野心平

良い言葉は脳裏に情景を思い浮かべさせるけれど、草野心平の詩は情景と音が一緒に聞こえる。擬音語擬態語大好物。蛙も素晴らしいが蛙以外の詩も大好きである。桃のやつとか。

 

大仏次郎 敗戦日記大仏次郎

どうしてだれも「勝ち目ないしやめようぜ」って言わなかったんだろう、みんな馬鹿だったのかな?というのが、子供のころからずっと不思議に思っていることの一つで、それが知りたいために色んな「戦争日記」を集めて読んでいる。山田風太郎のとかも面白い。ドナルド・キーンも「作家が見た戦争」みたいな本を出しておられるね。読んだ読んだ。凄く面白い。
大仏次郎は、まぁ今で言う「超売れっ子ラノベ作家」「人気ドラマの原作に続々」という感じの人かと思うんだけど、実はすごいインテリである。その「インテリが見た戦中・戦後」。お金持っていて人脈も広いインテリ層の一員なので、かなり最後の方まで切実に困窮はしない。その辺が百鬼園先生とは大きく違う。基本リベラルだから忸怩たる思いがあったりそれを口に出すのも知識人層としての自負が許さないという感じがあって興味深い。
大仏次郎が居ても、内田百閒が居ても、戦争にはなってしまったんだなーと思うと本当に怖い。こういうのは「断絶」問題だなーと思ってて、どのように非合理であっても戦争した方がいいと思う人もいるわけだ。だから、21世紀の今でも戦争しなきゃいけない時は来るんだろうなと思う。私はその時までには死んでいたい。多分、まともに声を上げても聞いてもらえないんだろうなと、色々戦中・戦後日記を読んで得た結論。私はインテリでもすごい人脈があるわけでもないので、もし戦争をするって言うならその前に死んでいたいわ…。

ワイルダーならどうする?―ビリー・ワイルダーとキャメロン・クロウの対話キャメロン・クロウ

最後は映画本。ビリー・ワイルダーは大好物の映画監督。元は脚本家なので、プロットもセリフもキッチリ、すじ・おちが付いていて素晴らしく「よくできている」と見るたびに思う。
キャメロン・クロウは、このごろはどうもイマイチ精彩を欠いてるような気もするけど、セイ・エニシングとか相当に甘酸っぱい良い映画を撮る人で、ワイルダー大好きなキャメロン・クロウがインタビューを仕掛けては煙に巻かれている本。何度読み返しても愛おしい。

 

長くなりすぎて、なんかすみません。

イングランドvsフィジーは、何だかんだでイングランドがフィジーを翻弄といった内容で完勝しました。このまま日本vs南アフリカが始まる時間まで書き続けてしまいそうになりましたが、一段落してよかった…。

 

最後まで読んだ奇特な人ありがとうございます。ほんとうに。