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長い感想

100文字では足りなかった時に

落語と私

らくご

昨日は、NHKBSでこういう番組をやっていまして。

www.nhk.or.jp

ちょうどこのところ落語趣味に浸っていたので、大変タイムリーで、かつ面白い番組でございました。

 

落語とのファーストコンタクトは、遡れば子供時代に祖父母に連れられて鈴本に、その後は大学の時に落語趣味の渋い友人に誘われて末廣亭に、行ってそれきり。
そしてようやく自発的にハマりだしたこのごろは「三度目の出会い」である。10年以上前になるのだが、仕事でたまたまとある落語家さんとご縁があった流れで、独演会にお誘いいただいたのが本当の始まりである。
この落語家さんが東の大名跡で、私は運が良かった。独演会のチケットをつきあいで買った上司のおこぼれにあずかって国立演芸場に行ったんだけど、これがすごく良くて、ああ落語ってこういう感じか、と興味を持った。その後すぐすごくタイムリーに、タイガー&ドラゴンとかちりとてちんとか大変素晴らしい落語ドラマがあったりしたもんで、はあ落語面白いなぁとなった。

ただ自分で落語会に行ったりするのもなんとなく気が引けて*1、近所の図書館であまり深くも考えずにたまにCDを借りては気が向いた時に聴いてくすくす笑うというという、少し距離のあるクラスメートぐらいの間柄が続いたんだけど、また知人に誘われてとある落語会に行ったら「ああそうかこれバンドだ」、玄人趣味で敷居が高いなぁって思わなくてもいいんだなーと気が付いたのがこの夏あたりである。長い歴史。ちょっとずつ距離を詰める野良猫との関係のような*2落語と私の関係。

 

しかし落語家さんってほんとたくさんいるのだ。そして落語会もたくさんあって選べない。選べないので、近所でやってて散歩がてらに行けるやつ、とか、テレビやラジオで知った人の、とか、その辺をよすがによろよろとやっている。こういうのはライブとか映画と一緒で、一度行くくせがつくと、山ほどチラシをもらったりアンケート書いたら案内を頂いたりとかで、なんとなくずるずると落語に行くことが日常になってきたりする。落語は、寄席も落語会もだいたい2000円ぐらい、高くても3500円ぐらいと割とリーズナブルなのも良い。映画と変わらないぐらいなのね。

 

冒頭のNHKBSの番組は割と良かった。バラエティ的な番組だからどっしりと落語が聞見られるとは思わなかったけども、思ってたよりも多めに往年の名落語家の映像チラ見せもあったりして、ああ談志の若い時の落語生で見たかったなぁとかしみじみ思った。一方で、ああなんか要らんかったかもなぁと思ったのは「落語をビジュアル化してみよう」のコーナーで、柳家三々さんの落語にドラマをかぶせてたんだけどさ、これ三々さんの落語そのままをみたかったわよ。

 

落語を生で見るようになって、すごく好きだなぁと思うところはいくつかある。

 

1つ、いつの間にかお話に引き込まれる緩急

うまい落語家さんだと、まくらでころころくすくすと笑わせられたあとに、一瞬すうっと空気が真空ぽくなって、そのあとおもむろにお話が始まる。まくらは近況オモシロ話とかちょっとしたオモシロ時事とかその辺りの他愛ないようなものなんだけど、いつのまにかすすすっとお話に入ってするすると羽織を脱いだりして、ごく自然に空気を線引きする。言葉は悪いがまだうまくない前座さんとかだと、このすうっというのが無いのが面白い。技術なんだろうなと思う。
この「すうっ」となるところが割と良くて、CDで音だけ聞いてた時にはなかなか分からない面白さだった。クラシックのコンサートの前のA〜のチューニングのあとの静寂とか、ライブの前の一瞬の静寂の後のワアァァァァ!という歓声の感じとか。それを一人でやっちゃうよね落語家さん。すごい。

 

1つ、とにかくかわいい

落語に出てくる人はだいたいかわいい。なぜならばかばっかりだから。
身を持ち崩した若旦那やはなからボケっぱなしの長屋の喜六やハチクマコンビやら、知ったかぶりのご隠居やらかわいい人たちだらけである。おかみさんとかご隠居とかはしっかり者の役どころの時もあるけど、こないだ聞いた花緑さんの刀屋というお話は、長屋の旦那とおかみさんのWボケがすごく面白かった。ボケにボケ返してんだよなぁ大丈夫かあの夫婦は。オチもおかみさんがさらっていってたぞ。
ボケてる登場人物がかわいいのはもちろんとして、動物が出てくるお話の動物のかわいらしさもまたとても良い。手持ちの落語音源だと、米朝の猫の忠信に出てくる化け猫が超かわいい「わたしはあのときのぉ〜、こねこでございますぅ!」っておどろおどろな三味線に乗りながら叫ぶ米朝師匠がかわいい。超かわいい人間国宝
こないだ聞いたやつだと、まめだが可愛かったなぁ。タヌキ出てくるお話はだいたいタヌキがちょうかわいい。まめだはタヌキが殺されちゃう話だからかわいそうなんだけど、かわいそうかわいいんだよな。ほかのお話にもタヌキ、キツネ、ネズミ、ネコ、あたりがよく出てくるけど、どいつもこいつもとてもかわいい。
言っておくがこの「かわいい」ものたちは、すべておっさんがやってる。かわいいが作れるおっさんどもが落語家さんである*3

 

1つ、おもろうて、やがて。

「おもろうて、やがてかなしき」という言い回しがあるけども、落語って「笑笑笑」だけじゃない。
破綻しっぱなしボケ倒しゲラゲラ笑いっぱなしのも大変宜しいけども、なんかちょっとほろっとしたやんけー、ってのも結構あって、それをすごくさらりと上手にされるとたまんない。わたしがハマったのは冒頭の「サード・インパクト」で馬生師匠のおもろうてやがてせつないお話を聞いたから*4だったりする。
おもろうて、の後に続くのは、悲しかったり切なかったりもあるけど、温かかったりじわっとしたり、ほんのりしたり色っぽいな、なんてお話もあったりする。落語って、「笑」をベースに、いろんなプラスアルファがある。「笑×笑」だったり「笑×切ない」「笑×怖」「笑×悲」とかね。
面白い×悲しいのやつを「人情噺」なんて言ったりするみたいだけど、分類しちゃうとああ面倒な勉強ぽいなと思ってしまう面倒くさがりなので、面白いをベースに何が掛け算されてるか、って思いながら見てたりする。すごくよいものを見聞きすると、面白い上にほろっとして色っぽいうえにちょっとためになったぞ、なんてことも起こる*5

 

1つ、鳴り物たのしい

東京の落語だとないみたいなんだけど、上方落語だと生演奏のBGM付きである。こないだ大阪に用事があったついでに天満天神繁昌亭に行ってみたのだが、鳴り物あるとなんか面白い。
ところでたまたまだったのかもしれないけどわたしが見に行った回の繁昌亭は、現代落語とか創作落語の人が大勢で、関西って生々しく落語なんだなーって思ったりしました。あと桂雀三郎師匠@ヨーデル焼肉食べ放題の歌の落語聞けてびっくりした。雀三郎師匠がまくらで「わたしは落語のCDも出してるし落語家だけど収入上の本業は歌手ですねん。皆さん歌ったら知ってる曲でっせ。やーきにくやきにくたーべほーだい、たーべほおーだい、たべほーおーだーーい」ってやって、あ!って思わず言うたら師匠に「知ってくださってるお客様もいらっしゃってホッといたしましたが」とか指されて大変恥ずかしい思いをしました。

 

1つ、近い

落語会、いろんなところでやっていて、こんな小さいとこ?!みたいなのから、こんな立派なホールが満員に!というところまである。小さいとこの若手勉強会みたいな席だと、出演者がお見送りをしてくださったりする。わたしはばかものなのでずうずうしく「面白かったです!」とか言ったりすると、「あの噺はこれこれこういう背景があったんですよ」とかそういうトリビアを教えてくれたりする落語家さんもいたりして、ますますライブハウス感がすごい。世の中にはそばを食べながらの落語会などもあるらしいのだが、そんな玄人感満載なのにはさすがにまだ潜入できない。潜入してみたいけどなぁ。わたしの住んでいる下町では、気をつけて見ていると割とあちこちで小さい落語会をやっている。こういうアンテナは「そっち方面への感度」が高くなると初めて見えてくるもので、落語フィルタを通したわたしの街は完全に「落語の街」である*6

 

一つ、きれいさっぱり残らない

これはわたしがばかものだからなのだが、落語聞きに行った帰りに、いろんなことをあんまり思わない。振り返りしてあそこがああだったとかここがこうだったってのを、あんまりやらない。面白かったなー、イマイチだったかなーとかその程度だし、切ないお話やらを聞いても、別にそれをきっかけに人生を考えたりすることはまずない。これが素晴らしくよいとおもう。ゲラゲラ笑ったりああ切ないなって思ったりして、それでおしまい。さっぱりしてるのがとてもよい。

 

一方で、ちょっとこう、どうなんだと思うところもたくさんある。

ひとつには、このイットなご時世に落語情報がまとまってるサイトがない。小さい落語会はチケットサイトで扱ってないものが多いし*7、落語家さんの団体って、わたしゃよく知らないけど色々あって沢山あるっぽい。そして「ショバ」的なもの*8がどうもうっすらあるっぽい。その辺の事情が頭に入ってると玄人感高いんだろうけど、そういうの覚えとくのも面倒だし、なんかうっとおしいなぁという感じもあるしで困る。

あと、落語会行って困ったのは「身内感満載」なうっとおしそうなおっさん観客みたいな人。一人で行った落語会でしつこく話しかけられて嫌な気持ちになったことがある。観客と演者さんとの距離も近いし観客同士も割とアットホームな感じがあるんだけど、逆に考えればうっとおしい落語ファンのおっさんとも近いってことなので困るねこれはね。まぁたまたまだと思うけども。
ある落語会で落語家さんが「落語ファンのうるさ型のおっさんは、なぜか会場の四隅の奥に座って腕組みをしてる。鬼門を守ってるつもりか知らないが、滅多に笑わないし笑うときは肩を聳やかしてはすに構えてククッと笑うだけで陰気くさい」と言ってて、その会場にまさに端っこに座ってる60絡みのおっさんが腕組みしながらくくっと笑っててすごく面白かった。つまり「そういうもん」な、お約束なんだろうな笑。

 

あああ長くなったわ。好きなことを書くと長くなる。

 

最後に。

わたしが好きな落語家さんは、今の所は、生きてる人だと金原亭馬生師匠、春風亭一之輔さん、柳家花緑さん、林家三々さん、桂吉弥さん。どの方も大入袋な方々である。ぼーっとしてるとチケット取れないときもある。吉弥さんなんて東京でやる機会も多くないしね。困ったものだ。死んじゃった人だと、なんといっても米朝松鶴志ん朝。それから吉朝さん。まぁミーハーなもんですよ。これからもっと好きな落語家さんが増えるといいな。とりあえず色々見聞きしてちょっとずつ増やしていこう。若手の人でもあら思てたよりずっと面白いわって人いてすばらしいのです。

このところ見た落語家さんだと、桂宮治さんと笑福亭べ瓶さんがかわいらしくて好きだったなぁ。宮治さんのタヌキ、ちょうかわいかったんだよもう。また見に行ける機会があるといいな。

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*1:なんか玄人趣味感がありませんか寄席って

*2:私はそもそも趣味だけじゃなくて人間関係も全体的に人見知りというか疑り深いというか、距離を詰めるのに時間がかかる

*3:女流の落語家さんのお話もいくつか聞いたけど、これは上手い!という人はまだ出会ってないなぁ。ちょっと講談ぽくなっちゃうんだよねなんでだろう。かわいいものがかわいいを演じるのは割と難しいのかも

*4:ところがこれも、あんまうまくね、な人がやると、エグいんだよなぁ。落語って上手い下手がすごくある。落語道を教えてくれた知人曰く、寄席は玉石混交だから初心者は上手いと評判の人の落語会に行くべしと言われた。確かにそういうとこはちょっとあるかなぁ。落語会とか独演会でも、前座さん上手いなぁって時と、ああがんばれよって前座さんの時がある

*5:志ん朝がまさにそんな感じなのです。志ん朝好きだわ

*6:そういえば初めて一人暮らしをした街は今の住まいと実家から1kmも離れてない隣町なのだが、落語家が住んでるマンションであった。馬生師匠のお友達だったそうでその縁もあって楽屋噺がちょう盛り上がったのだった。近所に喫茶店がないとかあのマンション変な装飾あるよねとかそういう。そして今は亡き実家のご近所にも思えば噺家さんととある有名な色物さんが居て、思えばそういう環境だったのに勿体無かったわねと思う

*7:チケットサイトに手数料払うのもったいないもんね

*8:なんとか協会の人はどこそこの寄席にはでれないとかトリを取れないとかよくわからないけどそういう取り決めがあるぽいね。ないんですかね。よくわからない…

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