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長い感想

100文字では足りなかった時に

すごく雑な「保育園足りない」問題への感想

長すぎるブクマ的なもの

「保育園落ちた日本死ね」と叫んだ人に伝えたい、保育園が増えない理由 | 駒崎弘樹公式サイト:病児・障害児・小規模保育のNPOフローレンス代表

 

主旨には、ほぼ全面的に賛成なんです。若い人みんな投票しようとか、議員さんに文句を言いに行こう、というのは。

ただ、一部の論旨にある、高齢者にばらまいた3,600億円を子育てに回せというのは、「もののたとえ」で言ってるのだろうとは思いますが、筋が宜しくないと思う。

ブコメでも申し上げていますが、子育てに関するコストは今後永続的に詰みあげていくべきコストなので、一時的な支出を例に出すのではなく、恒常的な歳費としてあらかじめ考えろよ、という話にしなくてはいけない。
更に言えば、特に保育コストについては、生活や命にかかわるコストでもあり、需要の変動性が高く局地的で、後述しますが「いたちごっこ」的な性質を持つ費用なので柔軟性もあってほしい、という、予算作成した経験がある人が聞いたら、ふざくんな簡単に言いやがってと怒髪天を突いちゃうような難しいお金だったりもします。

 

だけど、バラマキ3,600億円を例に出しちゃうと、「にっくき老害が奪った3,600億円を取り戻しさえすれば!」的な、あまり役に立つとは思えない感情に着地する人が出てきてしまうのが、とても残念だと思う。
それに「あれは一時的な景気刺激策でしかありません。子育て環境はSHINE!安倍内閣で頑張っております」とか言い逃れされてしまう可能性があるでしょう?ただでさえ現内閣は、少し株価が上がったりして油断するとすぐに「女は家で子育て&仕事も頑張って輝け」とか一億総活躍どころか一億玉砕みたいなことを厚顔無恥に言ったりする人たちです。取られる揚げ足はなるべくない方が良い。
駒崎さんのご活躍には頭が下がることしかないのですが、お立場や発言も「意味を持つ」方でもあるので、ぜひ、もう少しで良いので、「おかねのはなし」については慎重に、揚げ足取られないようにしてほしいと応援しつつ願っています。

 

それで、ここからが本題なのですが、当該の記事についたブコメで、面白い視点のものがあったので、この記事を書くことにしたのです。

「保育園落ちた日本死ね」と叫んだ人に伝えたい、保育園が増えない理由 | 駒崎弘樹公式サイト:病児・障害児・小規模保育のNPOフローレンス代表

東京は場所がないって言うけど、11%以上の空き家率に鑑みるとなくはないんだよな。保育園をもっと不可欠なインフラの1つとして捉え、都市計画を行うべきだと思う。あとは園庭での騒音に対する苦情問題がネックか

2016/02/17 12:29

b.hatena.ne.jp

 

id:hoshigirl さんのこのご指摘、するどいと思います。
現実解としては、11%の空家があっても集約しないと保育施設の運営には色々差し障るとも思うのですが、保育施設を必要不可欠インフラとして都市計画をしましょう、というのはとても頷けるご意見です。

ご存知の方も多いかと思いますが、東京の江東区では、現在、大規模マンションの開発に際して「公共施設整備協力金」というものを、マンション1戸あたりだいたい100万円前後上乗せするか保育施設を設置しなさい、という条例が出来ています。豊洲を象徴とする湾岸エリアの埋め立て地や工場跡地に雨後の竹の子のようにマンションが建ち、学校が足りないという事態になることが分かって、あわてて制定した条例です。
この条例、話題が出始めてから制定されるまでかなりの時間がかかった記憶があります。江東区は条例制定後も順調?にマンションがにょきにょきと建っているので、割高でも買う人は多いのでしょう。保育施設の付いてるマンションならむしろ欲しいぐらいでしょうしね。

 

で、今、保育園が足りねーよ!って怒っている人たちが住んでいる街に、これから「学校足りねーよ!」「学童足りねーよ!」が連鎖的に起こって行くんですよ、いや、もう既に起こっている。小1の壁と名前がついて問題は顕在化してたりもする。保育園→学童スライド移動できないと大変、学童と保育園のタイムスケジュールが違うので大変、とかそんな感じのやつです。

 

江東区のような「学校たりねーぞ」問題、そして共働き家庭の「学童たりねーぞ」問題などが、首都圏のあちこちの「保育園たりねー」な地域に、今現在同時進行で起きてる、または早晩顕在化します。ずっと「足りない」に追いかけられる形です。

 

3,600億円が、あと5年ぐらい継続したとしても、たぶん間に合わんよ。

 

なぜかと言えば、ひとつには、都市部で共働きを目指すご夫婦は「保育園ありき」で人生設計を決めるというのが既にノウハウ化されているために、行政がきちんと声を聞けば聞くほどそこに保育環境を求める人が集まってきて常に「保育施設整備のいたちごっこ」になってしまいやすい、ということです。私の友人にも、社内保育施設がある会社に転職とか、保育園の開設予定に合わせて家を買ったとか、そういう"ざんない"ことが、ごく普通に行われている。

 

更にもう少し理由を掘り下げると、それ以前の昭和時代にいったん都市部の人口が激減しちゃったから、そして少子化傾向は実は昭和40年代後半からずっと変わらず続いているからです。40年以上ずっと「収縮し続けてきた市場」を突然180度方向転換させるのは、簡単ではない。保育施設も足りないけど、そもそも保育士さんが超絶人手不足。保育士の受験者が増加反転したのはこの6、7年ぐらいのことです。それに、ブコメを見ても「なんだかんだで母親が育てりゃいい」みたいなものがちらほらとある程度には、まだまだ開明されていない「空気」もあったりする。

 

当座の対応にお金と政治的な行動は必須ではありますが、お金の問題だけじゃないよね、これもう。社会構造の問題。政治家に文句言ってるだけでも、どうも違うような気もしてくるんですよ。もちろん政治にはもっとまともにやってよ!もう!、とは当然思いますが。
東京への一極集中の害悪というタームもブコメに多く見かけましたが、都市間の不均衡も世代間の不均衡も含め、社会構造の問題よねこれ。

 

で、都市間不均衡をなだらかにするために、「都市計画にあらかじめ算段しておく」というのは、もっと積極的にやっていっていいと思ったりします。

実は、都心の区って人口の増減にずっと頭を悩ましつづけているんですが、バブル期に作られた条例では「地上げしてビル建てるなら上に住宅も作れよ、人がいなくなると困るんだよ」というものがあったり、バブル崩壊して地価が下がってマンションだらけになったら今度は「繁華街は繁華街、住宅地は住宅地でもっとゾーニングする。マンション増やさんといて」という風に地区計画をふんがふんがしたり、苦悩の跡が見られてその筋の人にとっては面白い話でもあったりしますが、要するに、厚生労働省的な、文部科学省的、それから国税庁*1な範疇じゃなくて、国土交通省的な範疇でも、やれることがありそうだなーとは思ったりするのです。まぁ反対もたくさんありそうではあるんですが…。

 

それから、経済産業省的、というか一民間企業的(=つまり私ども社畜)にも、それぞれやれることあるかなぁ、とかも考えてみたい。

サラリーマンの働き方がもう少し増えるといいなぁというのは、ホテントリにもちらほら見かけますけど、例えば、妻産休1年育休み3年、その後は夫3年育児休暇を取れたりすると、そうとう捗る。
でもそんなエクストラオーディナリーな制度をやれるのは今のところは先進的な会社や、進取の気性に富む会社員や、出世に興味がない公務員ぐらいなんだよね。相当エッジの立った人たちという感じがあります。多くの会社ではそんなことできない見えない圧力がある。でも、20年以上前はエッジの立った人しかできなかった「働きながら育てる女性」が今では物珍しくもないことを考えたら、「保育園取れなかったから育休伸ばすわ」とか言える会社や人が少しずつでも増える世の中がいいなと思ったりします。

ただ「期間従業員問題」は一方で、非正規労働と正規労働の谷を広げることになってしまう可能性があるのが難しいところではあるんですが…。
正規・非正規問題もやっぱり「不均衡」問題なわけで、話は変な方向に行きますが、資本主義社会の行きつく先って「不均衡」なんだなーってしみじみ思います。不均衡を利用してがっぽり儲けるのが資本主義の本質ですし、あらかじめ組み込まれた時限爆弾。

 

資本主義について思いを馳せたついでに、いくつか見られた「保育園問題、民間の活力で何とかならんのか、出でよ金の亡者よ」という意見についても考えてみようと思います。

が、首都圏では、これ、すでに格差社会的に進んでいたりします。

例えば一例ですが、東急グループでは、沿線住民丸抱え的に子育て支援サービス事業を展開しています。駅近くの保育園、お迎えや延長22時までオッケーの学童や夏休み問題を解決できるキッズキャンプ等のイベント、東急駅でのPASMO利用データと連動したセキュリティサービス、などカユいところに絶妙に手の届くサービスが用意されていますが、これ、高いですかなーり。ただ、これで事業者が儲かっているかというとそうでもないらしい。基幹会社である東急電鉄にとって沿線価値を高めるための施策、おそらくグループ全体の長期的な利益に資すると考えているのではと邪推しています。高いけど質の良い子育て環境が得られる東急の街、ということなのではと。

一方で、都心部のビルの一角にテナントとして保育園が入っている風景も日常的になりつつありますが、これも賃料はかなりマケてもらってるケースが多いです。東急方式ではありませんが、ビルのテナントや従業員へのサービス・ビルの質を高めて維持するためのもの、社会貢献的なものとして位置付けられています。まともにビル賃料を払うと保育園、全然採算が取れないんです。
さらに、多くが認証保育園であるため費用が割高、職場まで満員電車で子を連れてこなきゃいけないなどのデメリットもあるため利用者が伸び悩む園も少なくありません。結果、事業者に撤退されてしまい預けていた親御さんが悲鳴…という例もあります。

保育施設は市場原理が正常に機能していないのが現状であり、更に言えば、儲かりにくい構造の仕事になってしまっているという宿命があります。まぁだから駒崎さんの(政治的)態度で示そう、福祉ちゃんとやれよ政治家、という意見が圧倒的に正しいということでもあるんですが。
まぁ、保育の仕事が儲かるようになるには、一つには保育士さんがもっと尊重、尊敬されるべきだと思いますので、前述した「とはいえ親が直接育てる方が」的な目線が完膚なきまでに亡くなってしまわなきゃダメだろうな…という諦念もあったりします*2。極端な妄想ですが、保育士を国家資格や上級公務職にしてしまう、受験資格大卒以上給与も上級公務員と同等、とかステータスを上げちゃえば、保育士になりたい人が増えてベビーシッター業界が活況!みたいになるかな。そうすれば、風向きは変わるでしょうか、うーん…。

 

なんでこんな閉塞感あふれる話になってしまうのか、といえば、やっぱり「共働き家族」が一般的になりつつあるからだと思います*3。女性の社会進出という一面だけで見れば「成果」だったりもするんです*4。反面では、「共働きしなくては不安」という若い世代の将来不安もあると思います。こっちも本当に改善の目が見えない大問題で、日本はどうもゆでガエル状態で困ってしまうねほんとね…。

 

ただ、お金だけで解決できることじゃなく、社会の構造が変わっていくときのゆがみやきしみには、マンパワーや愚痴の言い合いなんかをしながらなんとかやっていこう、とか、社会構造が変わっていくことあまりネガティブに捉えないように、とか。老害死すべしみたいな不毛な世代間闘争*5にはならない方がいいなと思ったりします。老人=誰かの祖父母だったりもするわけで、敵対しても、誰も幸せにはならなかったりしますから。

 

 

おまけ、がすごく長くなった。

駒崎さんの記事で危ういなぁと思うのは、お金のことに加えて、あと1点、行政が参入障壁になってしまっているという点です。

これは、個人的には反対です。異論はあると思います専門家じゃないんで絶対とは言えないのですが、公共性の強い分野や福祉に近い分野であるほど、規制緩和は質の低下に直結するのではと私は思っています。

 

だってさ、「儲からない」から民間は手を出さないんだもの。
福祉事業ってウラオモテで、きちんと利益を積み上げていけるのなら、お金大好きな人たちがとっくに手を出してるはず、民間企業では継続が難しいからこそ、税金を使ったり自治体や国のリソースを使うわけです。

 

私は当該の駒崎さんの記事に、「老人ホームも建築確認申請もそう(緩和→悪化)だったのよ。」とブコメりました。

これらの規制緩和は、つい最近にも起こった酷いニュースにつながっています。介護士の事件とか、杭が大変なことになっていた事件とか、スキーバスの事件とか。どちらも、この10数年の間に規制緩和された分野に関係しています。
介護施設の種類を増やして民間企業の参入の幅を広げた結果はワタミの介護や悪待遇の介護事業者。建築確認申請会社への委託の結果のもやもやスキームによる違法建築。貸切バス事業者の保有台数等の規制緩和の結果が重大事故につながった。

 

駒崎さんやフローレンスがダメだということでは全くありません。
ただ、立ち位置として駒崎さんは「事業者」ではある。ニーズもあって深刻な社会問題でもあり、それに応えることも可能な「事業者」だから言えることなのですが、すべての事業者が同様とは限らないんです。
それに「事業者」の立場から見たら参入障壁に見えるものは、利用者からすると消費者保護でもあるので、この辺は、駒崎さんの提供しているサービスへの自信から来るのだとは思いますが、ちょっとあまりにも性善説すぎるというか、嫌な言い方をすれば「事業者だからこそのポジショントーク」なんじゃね、とも思っちゃったりします。

*1:子供のいない人から山ほど税金をぶんどってやれ的なご意見はそのままレアなものだと少し乱暴なようにも思います。控除とのバランスとか世帯構成員の社会的な意味づけをもう少し整理してからかなぁ…。あと現実的には、子供がおらず、かつ、潤沢に税金を取れる独身者っておそらく頭数少ないんじゃないかと思う。なんだかんだでお金の心配がなければ産みたいと思う人の方が多いんじゃないか。調べてないから分からんけど

*2:尊敬する河合隼雄先生は日本は母型社会だとおっしゃっておりましたが、事実かどうかはともかく母親子育て、家事は女的な社会てそれこそ連綿と続いてきた癖でもあるでしょうから、簡単にはひっくりかえらないかもなぁと

*3:厳密に言えば、昭和初期ごろ日本経済において資本集約が進んだ時期、つまりサラリーマンの大黒柱がいる世帯が増加するまでは、多くの世帯には個々に家業があり、家にいる女性は「家業を手伝う」という義務も負った稼ぎ手の頭数だったりもしたわけですが

*4:おばちゃんが若い頃、90年代の半ばでもまだ大卒の女性が働きながら子供を持つのは「スーパーウーマン」的な感じがありました。男女雇用機会均等法改正のずっと後なのに。余談ですが私は学生時代、交際していた人に「僕と結婚するつもりなのだから、就職はしないでほしい、するとしてもキミが面白くならなそうな仕事にして」と言われたことがあります。当時は、そう言われても、まぁそんなもんかもな、ぐらいに受け止めてしまった。私はそんなマヌケでもあるしそういうこともあるかもなと思うぐらいの時代でもあったんです。結局色々あってお別れしたけどな笑

*5:敵は老人でもあるが、老人だけじゃないからな