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長い感想

100文字では足りなかった時に

リニューアルした東京都写真美術館に、絶望テーマパークを見に行ってきた

ゲージュツ

早く行かなきゃ早く行きたいと待ち望んでいた、東京都写真美術館杉本博司の展覧会に行ってきました。ロスト・ヒューマン展。

 f:id:penguaholic:20160917081536j:image

 

私は、杉本博司がすごく好きです。大金が手に入ったら広い家に引っ越して、広い壁の一面に、例の水平線の作品を3ケ並べて、日がな水平線を見たりして過ごしたいと思っているんですが、実際には大金を手にしているわけではないので、日比谷線に乗っかって恵比寿まで行ってきました。

 

あんまり楽しみにしすぎていたため、ほとんど情報をいれずに我慢をしていたのですが、行ってみて本当に、良い意味で裏切られっぱなしでした。

いい意味で疲労感たっぷりというか、牙をむいてきたなぁというか、今までの理知的で端正な作品とのギャップ…というか、せっかくリニューアルしたのに、錆びたトタンだらけやないかwwというか。

 

何が杉本さんをして、この世界を作ることに駆り立てたのだろうかとか、このところの世界中を覆う不穏さについて考えたりしながら、私は美術展を見ていられる時間って普段だったら2時間ぐらいが限界なんですが、途中ほとんど休むこともなくすべての展示を行きつ戻りつ堪能して、もう少しいいだろうか、と会場を出て時計を見たら3時間半も経っていました。いやーすごかったです。こんなにぐったりする展覧会は本当に久しぶり。

 

最初の展示室は、さまざまな職業名を借りて『今日 世界は死んだ もしかすると昨日かもしれない』という言葉から語られる"人類の終末"と、錆びたトタンで思い思いに小さく区切られた空間に、"人類の終末"への想像や思考をさまざまに喚起させる展示が続いています。
これが何ていうかですね、展示されている作品や蒐集品の一つ一つ、つづられている言葉ひとつひとつの、作りこまれ方がはんぱない。その上、取り上げられている「職業」が語る言葉の、全方位に機関銃放射してるのかな?という感じのストロングスタイルな絶望表現。

錆びたトタンに囲まれて、右を見ても左を見ても「絶望」しかない空間。これは絶望テーマパークだなぁ、と思いながら、隅から隅まで目が離せない。

 

あと、すごく驚いたのは、いちいち面白いというか、物理的に面白がらせようとしてるよね、というのが、本当にびっくりしました。芸風、変わってないんだよ、変わってないんだけど、変わった?と思ってしまう。
ファニーさやグロテスクにかわいい感じは、杉本さんの写真作品のなかでも存分に感じることができるものではありますので、面白さへの志向はあるのは分かるのですが、積極的に笑わせにかかるようなのは、私は初めて見たからとてもとてもすばらしいものを見たなぁと感じ入ったのです。踊るロブスター人形面白すぎるだろう。たまたま隣で見ておられた外国人のおじさんと思わず目が合って、二人で指差して笑ったぞ*1

 

360°、蟻の這い出る隙間もないほどの絶望に取り囲まれていたのに、不思議と鬱に取りつかれるようなところはないんですね。ただ、ふわあぁぁ、とすっかり打ちのめされはして、それでよろよろと階段を下りて、次の展示室に。

下のにもう一つ設えられた展示室には、解体途中の映画館の写真が並んでいました。映画館で上映中に長時間露光して撮影するシリーズの、廃墟バージョン?という感じだろうか。もともとの映画館シリーズでも既に廃墟というか極北感のある不思議な作品なんですが、これが、ひとつ目の展示室の絶望テーマパークの後で見たら、すごく不思議な体験になりました。

映画を流しながら長時間露光すると、光が多いスクリーンの部分だけが、目に沁みるほど白く光る。建物の形骸がぼろぼろと崩れつつあるなかにスクリーンだけが白く浮かび上がる様子を見ていたら、何も映っていないはずの白い空間にさっきまで見ていた人類の終末というストーリーが見えてしまうというか、白くかすむスクリーンののめり込んで中に入り込んじゃいそうになるというか。

いや、単に集中して見過ぎてて、低血糖にでもなって倒れかけただけかもしれないけど笑。

 

映画のセレクトが絶妙*2だというのも追い打ちをかけて、さらにふらふらーっとなりつつ、部屋を区切っていた壁の裏側にするすると入っていったら、そこにはソリッドに磨き上げられたような、千手観音の写真がずらーーーーっと並んでて。やっぱり笑うところだよなここも…。思い出しても笑ってしまう。そういえば、三十三間堂で本物の千手観音像を見ても私はゲラゲラ笑ってしまうのだけれど*3、杉本さんの千住観音写真、あそこで実物見ていて脳内に結ぶ像と相当近い体験ができる。すごいなぁ。

 

絶望と、絶望や色んなものを映すスクリーンと、最後に見せられる仏の海。

実は、正直、あざとい、というか分かりやすすぎるインスタレーションだなぁ、とも思った面もあるんだけど、一方で、杉本さんはその明晰すぎる頭脳から生まれるクリアな知と、整った姿の後ろにおぞましくどろんとしたものの気配は感じるけれど私のような頭にもやのかかった人間では意を追うのが精いっぱい…というような、ハイコンテクストな作品を作る人、というイメージがあったので、良い意味で驚かされました。驚かされたのと同時に、分かりやすさの階段を下りてきて、それを発表するような必然性が、何かやっぱりあるんだろうなぁという勘ぐりが、どうしても出てきたりはしたり。

 

と、昨日の夜、たまった録画なんかを流し見しながらちまちま書いていたのだが、いつの間にか寝ていたらしく朝になっていました。ぐっすり寝た、が、途中で何度もすごく怖い夢を見た。見た夢覚えてるの1カ月ぶりぐらいだ…。

 

そのぐらい、おなかがいっぱいな体験になりました。

ああ楽しかった。

 

今日はサッカー、明日もサッカー!連休ばんざい

 

おまけ

絶望テーマパークの方は、杉本さんによる「様々な職業から見た絶望の書」を、色んな人が実際に文字に書いている。驚いたのは最後に出てくるコメディアン。極楽とんぼの"狂犬"加藤浩次
極楽加藤については、めちゃイケで色んな人をぶんぶんジャイアント・スイングしてる人、というのと、朝のワイドショーでたまに見かけるときに、ペロッとめくったら何かが出てきそうな人ではあるかなぁ、と思っていたのだが、筆跡が、とても印象的だった。他にも、面白い人の印象に残る筆跡がたくさん出てくるので、筆跡マニアは見逃せないと思うわ。

 

おまけ2

錆びたトタン板、いろんな素材いろんな形で、意味ありげになってたりする。相当量があったが、あれどこから手に入れたのだろう。杉本さんが骨董珍品と一緒に、廃材トタンをちまちま集めてどこかに溜めてたのかなとか妄想してたまらない気持ちに

*1:そういえば、今日は平日で来場者がそれほど多くなかったせいか、逆に外国人が多かったような気がする

*2:どんな映画を流しているかの解説が律儀に記されているのほんと好き。笑うとこでいいんだよね?

*3:笑っても大丈夫なところですよね?