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長い感想

100文字では足りなかった時に

アメリカ国のおもしろさとある種の難解さと、その活力の源泉と

長すぎるブクマ的なもの

id:tokage3 さんに割とぶしつけなIDコールをしたものの100文字ではかなり言葉足らずで尻切れで失礼ぎみな内容になったうえに、メタブで続けるにもちょっとあれだし、私もこのところ考えていたことを、ちょっと整理しようかなと思っていたので、まとまってないままに。

 

私も、アメリカ国で、NYやロス、サンフランシスコとかの都会じゃないアメリカ国に住んでいたらやっぱり思うと思うんですよ「移民がふえすぎると治安が不安…」と。理想よりも安全の方が、エブリディ・オブ・ライフでは優先されるから。

なので、あくまでも主に自戒のために(それなのにIDコールしてすみません)、どういう風に考えたら、私そっちに行きたくないのよという方向に行かないで済むかをずっと考えているんですね。上野千鶴子センセの考えを敷衍して「移民が排斥される様を見たくないから貧乏のままでいたい」みたいに思いたくない*1し。

 

ブコメに記したのは、移民=治安悪化、というのは、現象としては正しい分析であり対処としても適切だという考え方はできるけれど、概念としてはちょっと違うということです。
移民=治安悪化、ではなく、もう少しプロセスを分けてみたのがブコメです。
移民=貧乏だしこのまま母国に居ても貧乏が続くだけだから不法移民してきた=不法に入国してきたからまともな仕事にありつけず貧乏=生きていくためには仕方なく色々悪いこともする=不法移民が一人住むとそれを頼って不法移民が増えていく=不法だから生きていくためには仕方なく…以下ループ。

人種の違い自体が治安悪化の理由ではなくて、問題の根っこは「不法」ということと「貧乏」ということだろうと思うんですね。
そう考えると、トランプ大統領が壁を作れ!というのは気持ちは分かる。まぁ実効性は限りなく低いと思いますが*2。不法移民をなくすことで、「不法」状態が減るのであれば、それは色々社会にとって良いことだと思う。個人的にはだからと言ってトランプの票田であるような人が恩恵を受けて「豊かなアメリカ」に戻ることはないだろうな…とは思っていますが。

 

というのが、短いブコメのなかで私が言いたくなってしまったことです。
以下はまぁ自分のための補足というかメモというか考え方をもう一度整理するための足がかりの文章なので、まとまっていませんが…。よろしければお付き合いください。

 

これは私も実際に言われたことがありますが、白人のある種の人たち*3の中には、肌の色が白くないということ自体を恐怖として受け止めてしまう人たちがいるようなんですよ。私の学生時代ですが*4、アメリカ国で「黒人は色が黒くて顔の表情で何を考えてるのか分からない、たまに笑うと口が大きく開いて、口の中が真っ赤なのよ!ああこわい」と、もう中年を超えたぐらいの年齢の女性が言っていて彼女の夫が深くうなづいていたのが、割とびっくりしました。うーん。まぁ怖いと感じるのだろうことはしょうがない変えようもないだろうしなぁ…。と思ったのと、私に今優しくしてくれているこの女性は、私の黄色い肌についてどう思っているのかなぁ…とか思った。黒くなきゃいいのか、そうじゃないのか*5

 

一方で、アメリカ国における「移民」って何なんだよ、というのも、実はアメリカ国ではずーーっと、ずーーーっと繰り広げられている議論だったりします。それこそリンカーンの時代から、南北戦争の理由も、まぁ直接的な理由は「現実=南北の経済格差」だったりしますが、理念上では、南部州の人たちは「黒人奴隷を使ってる」ということを問題とした人たちも少なくなくいました。まぁアメリカってなんだかんだで、南北戦争時の対立構造から全然変わってなかったりするのだよなぁ…というのが、今回の大統領選挙の結果だったりする側面もあると思う*6

 

本題に戻ると、アメリカ人が「移民」と名づける人々って誰なのよ?ということを、理念上で問い直すと、全員が移民なわけです。ピルグリム号で入植してきたピュリタンたちだって、ネイティブアメリカンからすりゃ移民、というか掠奪者というか…。さらに言えばイギリス系ピュリタン入植者よりも先に入植している人たち(フランス系とか)もいますが、まぁアメリカに「国」を作ったのは俺たちピューリタンだろう、というのが、どうも一部の白人の人たちにはあるみたいなとこあります。これはイギリスとの独立戦争において先導的な立場だったからというのも大きいのだろう思います。

実はアメリカ国の白人、とひとくくりにするのも乱暴で、下位的な扱いを受ける「肌の白い人たち」もいたりしました。イタリア系やアイルランド系などのカソリック勢やユダヤ人やら、ヨロッパにはちょっと住みにくい人たちが新天地を求めてきた*7。で、実は後発隊の、非プロテスタントの白人たちは、ピュリタンたち(White Anglo-Saxon Protestant=WASP)よりも少し劣るものとして見られたり、実際に下位的な社会的地位にしか付けなかった、ということもあったりした。これ、何百年も昔の話じゃないですし、今でも続いているようなものでもある。ウッディ・アレンの映画を見ているとザ・人種差別なセリフがマシンガンのように出てきますが、アレンがアレをやれたのは、まぁアレンのアレなアレ*8な部分でもありますが、彼が「とはいえ比較的人種差別が階級固定化の理由になりにくいニューヨークという町」に生まれて育ったからで、中西部あたりであんなこと言ったらガチで拳銃出てくる可能性あるよな…白人警察官が黒人を銃で射殺した理由が「黒人だから疑った」だったりするような国でもあるのが、現在のアメリカ。

 

はてなの皆さんが「こんぼう」と名付けている、アファーマティブ・アクションと言われているようなものや現象たちは、こういう後発組(や20世紀半ばまで劣った人権しか与えられていなかった女性)の不利益を是正して社会を安定させようという試みから発達してきた考え方や行動なんだと思うんですよね。
一部で行きすぎていると考える人もいるのも良く分かるし私もそりゃーやりすぎじゃねと思うこともあるけれど、こういう現在まで続く背景があるからこそ、というのもある。

 

で、こっから本題ですが、こういう、アファーマティブアクション的な動きがでてくることこそが、「アメリカ国がアメリカ国であるゆえん」であり「活力」であり、そして難解さなんだろうと思っているのです。

アメリカ、日本は半ば属国のようになっているので「難解…」と実際に感じる機会があまりないかもしれないけれど、実はすごく難解ですよUSAのUSA性ってのは。
何しろ世界初および現存するほぼ唯一の「人工国家」です。

 

多くの「国」は、ある程度は人種や民族に連動して固まってできています。どうも「国」というものを作るときにはある程度の同一性があった方が、固まりやすいんだろうと思うんですね。スイスやベルギーのような人種・民族的複雑さを持っている国もヨロッパにはあったりしますが、しちめんどうくさい歴史の必然の上でそこに線引きがされている。かつてのソ連ユーゴスラビアのような「理念上で共和国を集めた的」な人工国家もありますがその手の国は20世紀を乗り越えられず倒れてしまったし、インドや中国のような、これからどうなるか分からない現在進行中の人工多民族国家もありますが、それでもある程度は人種や民族に連動する*9

 

で、アメリカって人工国家なんですよ。国の成り立ちが民族や人種(自然天然)に依拠していない。それなのにまだ世界に存在してるでしょう。面白いなと思ってるんですよね。ソ連も旧共産国家もなくなってしまったけど、アメリカはある。

アメリカ国憲法って面白いらしいんですよ。私は元の文に当たったことはなくて解説書を読んだことがあるだけですが、同一や隣接する人種や民族が寄り集まった基盤を持つ国では社会通念上コンセンサスにできることも、アメリカでは一つ一つ定義していく必要があるわけで、そういうことが一々憲法に明文化されていく。USAという国が作られてきた過程の中で、異なる人の寄せ集めであるからこそ発生する問題(分かりやすいところだと人種にまつわる問題)を憲法で「じゃあこうしましょう」という風に、軋轢や問題=争いが起きるごとに作ってきた、人工国家。多民族が寄り集まって出来た国だからこその、この律儀さというか妙な生真面目さが、ドミナントな人種がある日本で生まれ育ってしまった私なんかにはとても面白いものに映る。

よくはてな界隈でも話題になる「日本人的な閉塞性」みたいなものと真逆にあるところだったりしますが、この「律儀で生真面目に多様性を明文化してきた」必要性というのは、異なる社会的コンセンサス(民族などに関連した慣習)を超えてお互いが自由に経済活動=戦争を行うための「ルールブック」みたいな面もあったりします。
比較的フェアなルールブックがあるからこそ20世紀を席巻した主要な産業の少なくない部分がアメリカから発達したという面もある、と言えるかもしれない。まぁ20世紀はヨロッパは戦争ばっかりしとったからというのもありますが笑、逆にみればヨロッパが20世紀にやらかした2つの大きな戦争の「種」から逃げざるを得なかった人が集まった国がアメリカ、という考え方もできないことないですしね、乱暴ですけど*10

 

その成り立ち自体、その発展自体が「多民族であること」が源泉になってるから。寄り集まってきた人たちも多様な人種や民族だし、そのなかで主導権をどうやってとろうかという方法から今世界を席巻している主要な経済活動が生まれたりしているわけです。高度に発達した金融業しかり、映画産業しかり、IT産業しかり。アメリカ国で発達した経済活動の少なくない部分が「世界産業」に育つのも、アメリカのこういう「多様性由来の律儀すぎるルールブックとバイタリティ」が源泉としてあるのではないか。

これは私の妄想ではなくて、実は過去のアメリカ人知識人や論客も多くが同じことを言っていたりします。フィッツジェラルドスタインベックなどが有名どころでしょうか。私が私の妄想によって曲解している可能性も少なくないので、入門的な参考図書をいくつかあげておきます。 

アメリカとアメリカ人―文明論的エッセイ (平凡社ライブラリー)

アメリカとアメリカ人―文明論的エッセイ (平凡社ライブラリー)

 

 大学1年の時に、英語を教わっていた教授が面白い先生だったので、「先生、アメリカって面白くないですか?、すごい変な国だと思うんですよ」と問うたら教えてくれた本です。スタインベック自体は古い人なので、この文章中も「お前が言うかそれを」というところがあってまた味わい深い。アメリカの「まだ発展途中の矛盾」を抱えたまま理想のアメリカを探っているような本。

 阿川尚之氏は、古き良き昭和の時代の右派の論客かつ小説家でおなじみの阿川弘之氏のご長男でご本人も右派というか親米右派ですね。妹さんが阿川佐和子さんですね。これすごく読みやすいです。高校の世界史でアメリカの歴史の授業を聞いているような感じで。新書版も出ているので簡単に手に取りやすいと思います。

その他はこちら。この棚のほかにあと2つ、私の「アメリカ国のおもしろさを考えるための本棚」があったりします。ああ今見るとこれあんま関係ない本も混じってるなぁまぁいいや。そもそもアメリカ国について深堀りしている本ってまだそれほど多くなかったりします。それだけ歴史が浅い国でもあるんだよな。

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トランプさんが言ってることがどこまで本気か本気でやる気あるのか、という怪しさはまだまだありますが、例えば「移民を受け入れないぞ」という言い方だけが独り歩きしちゃうと、ちょっと違うんだろうと思います。トランプさんが言うている意図とも違うでしょうし、「アメリカって移民の国じゃなかったのかよ!」的な人たちが怒りだす。そして私もそう思う、排他的な方向を明確にした時点でアメリカの持つ「生み出す活力」みたいなものって減ってきてしまう可能性あるよね、と思っています。

なので、だからこそ、移民→治安悪化で直結して考えちゃうのは、ちょっともったいないなぁと思ったりするんですよね。

 

そもそも理念は置いておいたとしても、21世紀も1/5がそろそろ終わりそうなこのご時世、一時的な保護政策ならともかく、排他的な経済活動を継続的に行うなんて現実として無理でしょうしね。

 

というわけで、私はこれから洗濯物を干して、買い物に行くついでに新しいポケモンをゲットしに行こうと思います。tokage3 さんのおかげで自分の頭の整理もできてありがたかったです。

*1:上野先生はそのように言っているわけではなく私なりの解釈

*2:いまどき中南米からの不法移民は陸路を取らないのが8割以上という調査もあるようです。誰がどうやって調査したんだろ。TBSラジオの受け売りです

*3:全ての白人がではもちろんありません

*4:90年代半ば、ロス暴動のあった後、スパイク・リーマルコムXを作った後ぐらいのことです

*5:おそらく、そうじゃないんだと思った

*6:アメリカ国にとって南北戦争って、実は日本における明治維新とか太平洋戦争前後ぐらいのインパクトがある、国としてのフェーズが大きく変わる転換点だったりもするらしいのですが、この辺はこれを語るだけで本が書けるぐらいのアレなので置いておいて…

*7:またちょっと話は逸れますが、みんなだいすき映画の都ハリウッドのメジャースタジオの多くが移民のユダヤ人たちが作った会社だったりします。彼ら後発隊(でありかつキリスト教社会ではどこであろうと割と疎まれがちなユダヤ人)の中には、その頃ピューリタン中心で構築された社会でドミナントな地位を築く難しさのなかから、新興産業である映画産業を足がかりの一つにした人たちがいたという側面もあったりするようです。イタリア系移民が映画でおなじみマフィアになったりというのも、同様に、貧しさを克服するための方法であったとも言えます。まぁだからこそ移民=犯罪という現実の裏付けにもなってしまうんですけど

*8:あの方は色んなスキャンダラスな面も持っておられる天才ではあるので

*9:ものすごく雑な歴史認識なのは私が不勉強でめんどうくさがりなのでご容赦くださいということで

*10:モンロー主義の超曲解的表現。我ながら乱暴だああ乱暴