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長い感想

100文字では足りなかった時に

産めない&育てる機会も社会から奪われている男たちは、何をもって「言葉」を獲得すればいいのだろう

長すぎるブクマ的なもの

言ってることがおかしいとは思わないんだけれど…、一つ一つのエピソードをバラバラにすればそれぞれは頷ける内容なんだけど、読後、ものすごくカユイというか、なんじゃこのオッサンは…というか、割と情けない気持ちになってしまったインタビュー。

www.e-aidem.com

 

ダメだこの記事モヤモヤする。「功成り名を遂げた元専業主婦のオバハン・エグゼクティブの私の履歴書」というか…すごく男性的な記事だと思う。この文脈で「男自身がが男を語れ」って言うのは繊細さがないよ… 

という口の悪いメタブをしたためてしまったのですが、やっぱりこれ、ちょっとさぁ、うーん。

なんかね、これ、子育ても一段落した元専業主婦&今輝いている私の武勇伝という感じで、日経の連載「私の履歴書*1」っぽい。大変にこう、”力”思考というかマスキュリンだなぁというか。若い方がワナビー的なあこがれをもって読むと勉強になることもありそうだし、私は同世代なのもあって共感できることも少なくはないんだけど。
でもね、この”生き抜いてきたオバハン風雲録”の中に、「男性学」についてのくだりを持ち出すのは、ちょっとフェアじゃないなぁというか、やさしくないなぁというか、モノ分かってないんじゃないかなぁ…と、思うんですよ。

 

現代の女性が「女の生き様」を語る言葉を山ほど持っている理由は、つい数十年昔まで下級市民として男性と同等の権利を社会において持てなかったわたしたちの先達が、さまざまな闘争と思考を重ねてきたおかげです。
確かにそれらは一面では男性によって奪われてきたと言うことができるし、現代においてもやっぱり色々なジェンダー・ハンディキャップがあるけれども、一方で今生きている私たちは、形式上は自由な職業選択ができるようになった。
結婚し子供を産んで育てることで奪われてしまうなにかも残念ながら相変わらずあるけれど、子供を産み育てたという実感を手元に残すこともできるし、パートナー選びによっては「子供を育て家庭を営むことをもっぱらにする」という職業=専業主婦を選ぶことだって、自分のがんばり次第では「働きながら子供を育てる」=兼業主婦だって、「働き続ける」=シングルだって、何だって選択できるんですよね。これね、私たちは己は戦わずして得てますよこの地位。ありがたいです本当に。

 

で一方男性はね、まず産めないじゃない。
選択ができないんだよねここに関してはもうしょうがない。「女は産んだら選択肢が極端に狭まる」のは確かではありますが、男はそもそも産めないから選択しようがない。

さらに言えば、産んで首が座るまでの数か月~最低1~2年の間は女は一般的には稼ぐ能力が著しく下がりますから、パートナーである男性は働かざるを得ない*2。ここも選択できないんすよ男子。いやもちろんカップル双方の合意のうえで産むケースが多いはずなので選択はしてるんですけど、「俺が産んで育てるね!」を選択する生物的な合理性が、男性にはない、もしくは著しく低い。ものすごく当たり前のことを回りくどく言っていますが。過去の歴史で人間が「男性優位的な社会」を作っていったのは、産む・産まないという生物としての特性の違いが大きく影響してたりもするんだと思うんですよ。なんだかんだ、人間というものは今のところ男女のつがいじゃないと増えないですし、人間の子は育成に時間がかかるからね。

 

で、ですね。

でも男性学の歴史は浅い。「そんなもの必要ない、っていうか興味ない」って本人たちが思っていたから。

これ、「必要ない、興味がない」っていうの、本当だろうか。
思い込みじゃない?
確かに男性学という「学問」の歴史は浅いですが、男が「俺の生き方」を模索してこなかった、語る言葉をひとつも持ってこなかったとは思わないですし*3、確かに男性は、個人よりも社会の中の己をドミナントに考えがちな性質はありますが、それは逆の方向から見れば「大黒柱をやってきたトーチャンの矜持」だったりもするじゃないですか。

で、インタビュー中にもその「トーチャンの矜持」が、男を生きにくく、選択肢を狭めさせている理由の一つだと言っている。それは確かだと思います。が、一方でそれで女性側もある程度は恩恵を得ていたわけで…。なんかね、そんなに悪く言わんといてよとファザコン要素の強い私なんかは思ったりするんですよね。

 

でですね、

──「女同士はマウンティングする生き物」って言いたがる人がいるけど、おじさん同士の方がよっぽど“そう”な気がします。ネット上でもすぐ、「俺の方がこれについては詳しいんだ」とかやってるじゃないですか。あれをもしおばさん同士がやったらすごくみっともないって思われて公の場から無視されるか笑われて終わり。男同士だとなんかこう「ビジネスの話をしてるんだ俺たちは」みたいに見せかけて周囲を巻き込んで話を大きくする。

こんなもん、男だろうが女だろうが変わらなくない?
この後の、電車遅延で怒鳴ってるのは男性ばかり、ってのも、うーん。いつの話してんだろうこのオバハン二人、とか汚い口を叩きたくなるわけです。昨今は女性でも結構クレーマーですかみたいなこと普通にあるよ。ほらついこの間も小田急線の遅延の理由になってたりしたみたいですよ、あれ喧嘩したのどっちも女性らしいじゃないですか…。

これは私の暴言的な私見ですけど、マウンティング癖とかクレーマー体質とかって、性別につく属性じゃなくて「社会的な立ち位置」とか「役割」とかの属性に依拠する可能性の方が高いんじゃないかな。
たまたまついこないだまで社会的な立ち位置=社会的性差(gender)≒生物的性差(sex)だったってだけで、極論を言えばこの先の未来、女性の社会的な地位が上がれば、おそらく相対的に「ネチネチ車掌にクレーム付ける女」は増えるんじゃないかと踏んでるんですよ私*4

 

で、戻りますけれども、インタビューの構成の、この辺のくだりに、欺瞞が隠れてるんですよね。
わたくしの要約なので、お前の歪んだ目で見たらそうだろうよと思われる向きもあるかもしれませんが、

  1. 女はマウンティングするというが男だって「社会」を持ち出してマウンティングするタチの悪さがある
  2. それは競争社会から「降りられない」かわいそうな人だからだ
  3. 団塊ジュニアやその上の世代は特にそう←性別、かんけいなくね?
  4. そういう苦しさを男がもっと主体的に語るべき←性別、かんけいなくね?

なんかね、3から4に向かうロジックがね、きゅうに、グイッとねじれている。
競争やマウンティングの苦しさ(これ自体は至って現代的で都市的な不変の悩みだと思う)と、性別に由来する生きづらさって、分けて考えた方が良くない?

 

なぜなら、上段のくだりで、専業主婦にならざるをえなくなり”降りてしまった”と悩む女は、それでも色んな生き方を選んでいけるしポジティブに捉えることだってできるよ、女の生き方は柔軟に行けるよ、というエピソードがあるからなんですけどね。ここ、このインタビューの大切なところでしょう?違いますかね。

昨今は働き続ける女が当たり前になってるし社会問題化してる(保育園問題など)から、働く選択肢を手放した女=高学歴の専業主婦が身の置き所が無くて生き方を悩んでしまう、という話でしょう?
こう見えても私も高学歴なので笑、同級生で専業主婦をやってる友人からミミタコ級に聞く話です。そのぐらい普遍的で重大な悩み。このエピソードに対する受けは、「高学歴」だった自分に囚われずに、もっと幅広く自由に働くことや生きることを考えていこうよ、という素晴らしいメッセージです。

でも裏返せば、女だって十分「競争」の中で降りる降りないで身をすり減らすことが幾らだってあるということですよね、そして、それを現す言葉の使い方は決して男たちに比べて上達しているとは言えないんじゃない?だからこそこのインタビューが面白いなぁと思うわけで。

 

しつこいようですが、3から4に向かうところで、なぜかジェンダーの話にすり替わってる。なぜ?

このインタビューをつくった人たちが、「男ってそういうもんでしょ」という思い込みがあるから、じゃないかなぁ、これ。ここで突然ジェンダー的男性像をぶっこんでくるの、ちょっと悪意があると思うけどな私。

 

 

それでですね、一番、これ困ったなぁと思ったのは、インタビューを〆る最後のエピソードが「私は男を産んで男を許せたのよ」というザ・俺節だということなんですよね。

だって男性は産めないよ。そして男性が主体的に子育てに関わっていけるには、まだまだ、まだまだまだまだまだ、世の中は全然成熟してないですよ。もっと言えば正直なところ、産む性が限られる以上そこまで厳密にフェアになるわけねーよなと思ってる。

で、その「成熟してない社会」の責任の半分は、女性にもありますよね。

形式上就業機会が均等になってからもう四半世紀も、過ぎているのよ。
何だかんだで相変わらず「働くの向いてないから専業希望ですー」みたいな女性だって一定数いますし*5、残念ながら男性にはこの選択肢、全くと言っていいほど許されてない*6じゃないですか現代日本において。

それなのに「男が自分で語らないのが悪い」「私は男を産んで色々許せたわー」って、ちょっとひどいよ笑。ドSか。プレイか何かなの?プレイじゃないなら、さすがにこれは編集が雑すぎると思う。編集が雑なのか語りが雑なのかはわからないが。

 

女性が、生き方の柔軟性や多様性を得られたのは、結果的に結婚や出産で主体的に人生を選びにくかったという、不幸中の幸いというかサバイバル戦略というか、そういう外部要因によるネガティブな側面もありますけど、一方でそれは、パートナーの男性と荷を分け分けして人生を歩んでいくというポジティブな側面もあるでしょう?

もっと言えば、今の日本に住んでいる私たち女性は、大先輩たちの努力の甲斐もあって「受け入れる」以外にも「いなす」とか「からめ手から攻める」とか「正面で戦う」とか、色んなコマンドを駆使することができるようになった。

せっかく手にしたこの多様性や柔らかさを、なぜ、私たちのパートナーであるべき男性たちとシェアしないの?繰り返しますが、「男が自分で考えないのが悪い」&「私は産んだから男が分かった」で〆られても、男性は産めませんので「どーせいゆうねん」ってなると思うんだけどな。さらに言えば、育児休暇を取れる男性の比率の低さを考えたら、育てることに関してもコミットできない現実があるというのに、ここで「私は産んだおかげで分かったのよー」とかって、ちょっとさすがに〆方が能天気過ぎやしないか。これ、逆の立場だったら下手したらジェンダーハラスメントだぜ。

 

で、この辺は人によって主義が異なるところもあるかと思うんでアレですが、私は、自分が得た知見はシェアしたいタイプなんですよ、自分がした苦労は後輩もしてこそ一人前、というのが嫌いなんです。
だから、男性が「自分を語る言葉」を探す方法は、女性が今までやってきた方法の中から何かヒントになることがあるかもしれないから色々話がしたいし、一緒に暮らしていくことで自然に見つけてきたりするもんだったりもするかもなーと思っているんですね。「男はだらしないね、ざまあみろ」って切り捨てるのは、できれば避けたいと思っている。

いやまぁ、その日の機嫌によってうっせーばーか!めんどくせー!と怒ることもありますが。にんげんだもの

 

でも、うーんなんかねぇ。そこ最後、「あたし、産んだ、母性、すげえ」って〆ちゃうのは、色々雑だよやっぱり。

 

 

 

おまけ

全然本題とは関係ないのですが、このインタビュイーである河崎環さんという方はプロフィールを見ると団塊Jr.のとっかかりの世代なんですけど、なぜか

私の世代より上の団塊ジュニアやアラフォーより上っていうのは客観も主観もなにも、もう完全にその出世ゲーム、競争ゲームがノーダウトで自分たちの生き方にインストールされている。

とか、自分は競争社会から降りられないかわいそうな世代ではありませんニュータイプです、という感じになっちゃってる。
これ、編集がおかしいのか発言が勘違いしてるのか分かんないんですけど…。うーん。勘違いしてるんだとしたら、マウンティング力高いッスネ☆って感じッス

 

おまけ2

小川たまかさんの記事は基本的にはホテントると読んでいて、それぞれ示唆に富んでいて素晴らしいなと思っていましたが、この記事に関しては正直、内容がとっちらかっていると感じます。インタビュイーが憧れの方のようなので呑まれたか、思い入れが強い内容で、内容に振り回されてしまったか、盛りだくさんな内容を上手く編集しきれなかったのだろうか…。ハッキリ言うと正直残念なので、男性が己のジェンダーを語るには、というテーマでどこかでリベンジしてほしいなぁと切に思います。
あとこれを女性が取り上げてテーマにするのであれば、男が主体的に語らないのが原因だ、からスタートしてしまうのは意味がまったくなくなると思います。
単純に原稿の内容ということでいえば、男性学のくだりは、思い切って取ってしまった方がすっきりしたかもね。

 

 

話はずれますが、過去の歴史において、人間が「人権」を発見するくだりに相前後して「子供の発見」というのがありますよね。人権と言えばルソーさんですが、彼が「子供」を発見したことになっている。で、それらをよく育てるのが人間の責務ですよねという感じです。ものすげー雑ですが。

で、ルソーさんが考えた教育の方法は、現代風にいえばその子供を尊重するということだったりするんですよ、子供にもその人における「尊重すべきもの」がそれぞれ備わっていると考えたんだろうなーと思います。さすが人権に一家言あるルソーさんだけあると思うんですけども、そのように、人間は、歴史が下るに従って、人権や子供を発見してきて、20世紀ごろには「女」を発見することになったわけです。徐々に進化している人間。だからそろそろ「男」も発見したいよね。がんばろう。にんげんやればできる。

*1:私のなかでは「おっさん風雲録」というあだ名で呼んでいます

*2:南極のペンギン夫婦が、片方がたまごを抱え込んでいる間に長い旅をして自分と子供の分のエサを詰め込みに行くのを想像しながら書いています

*3:例えば近代~現代の小説のうちいくつかの素晴らしいものをよめば、男性の何かを得よう見つけようという軌跡をたどることができたりもします

*4:もっと勝手な妄想を繰り広げるとしたら、女性管理職とか女が大黒柱の世帯が増えると男女の平均寿命差も縮まってくる可能性あると思ってる。社会における優越的地位を持つということは家族との時間やら寿命やらの何かとバーター取引という側面がある

*5:居ても全然いいと思う

*6:これが本当に不憫だと思う。でもやっぱり産めないからなぁ。主に働く役割になる方がコミュニティが安定するよね